耳が丸くてほっぺが赤いツム。 【ツムツム】毛のはねたツム一覧!ミッション攻略のヒント!

ツムツム 友達を呼ぶスキルを持っているツムは誰?

耳が丸くてほっぺが赤いツム

・ソーサラーミッキー ・アリエル ・ラプンツェル ・ハチプー 以上のツムが得点を出しやすいですが… 実は、初心者の方には古参の 「ウッディ」がオススメです。 ウッディのスキルですが 「画面中央のツムをまとめて消すよ」というもの。 スキルを発動すると中央に青い星が表示され範囲分のツムが消去されます。 スキルレベルによって範囲は拡大しますが、レベル1で13個、レベル6で34個近く1回で消してくれます。 スキルレベルが4を超えてくると、急激に消す数が多くなります。 コツを掴めば、1回で28個平均で消すことが可能です! スキル発動数が16とやや多いですが、扱いやすい消去系スキルです。 しかも中央消去なのでスコアが安定しやすい特徴があります。 意外と初期からいるツムが役に立つんですねw 【耳が丸いツムでコンボが狙えるのは?】 正直、このツムたちの中からコンボが得意なツム…というのが土台難しい話です。 なにしろ、コンボといえば「ドナルドさん」か「ラビットさん」ですからね。 ドナルドさーん! …。 耳が見えませんからこのグループにはいません。 ということで、他のツムたちはどんぐりの背比べなのです! しかし…誰にでもコンボを途切れにくくプレイさせてくれるツム… 私も気になるので、プレイしてみましたが、相性もあるかもしれませんが、 私はアイテムも使用して 『アリエル』が相性がよく、コンボが途切れにくかったです。 アリエルのスキルは「サークル状にツムを消すよ」というもの。 アリエルが泳いできて、くるっと一回転しツムを消してくれます。 スキル発動も14と軽めなので初心者からでも末永く使えるツムでもあります。 くるっと一回転する分余計に周りのツムを巻き込みますので、スキル1でも平均18個ほどで消してくれます。 スキルを発動するのに難しいテクニックが要りませんから、初心者の方でもラクに使えます! スキル発動数が少ないので、スキルでツムを消去している際に、またフィーバーゲージが貯まってしまうかも。 ラクにコンボが稼げますよ! 【耳が丸いツムでコイン稼ぎができるのは?】 コイン稼ぎが出来るツム=長いチェーンでツムを一度に大量に消せる …というツムがやはりコイン稼ぎや高得点を稼ぐのに向いています。 おススメのツムですが、先ほどの高得点と同じように… ・アリエル ・ハチプー そして、もしスキルレベルが6のMAXまでいっているならば、 ・エルサ このスキルはバッとコインを稼ぐことができます! エルサですが、スキルは 『下からツムを凍らせてまとめて消せるよ』というもの。 ツムを一度凍らせ、凍った部分をタップすることで、ツムを一気に消すことができるのです。 また、すぐ消さずに2段重ねにすることで、あっという間に2段分のコインを稼げます。 もちろん、高得点も出せますから、是非使ってみてほしいです。 以上が耳が丸いツムでした。 頑張って耳が丸いツムをどれかスキルマまで育ててみたいものですね。 関連ページ ツムツムで指定される「毛が3本のツム」とは? ツムツムの「ふしぎの国のアリス」シリーズのツムとは? ツムツムで「ヒゲのあるツム」とはどれのこと?紛らわしやwww ツムツムの「ピクサーの仲間」とは? ツムツムで「ハートが出るツム」の対象とは? ツムツムでビンゴなどイベントでよくある「男の子ツム」指定内容を攻略するには? ツムツムで指定される「白いツム」と「白い手のツム」とはどれが対象なのか? ツムツムのイベントで見かける「口が見えるツム」とは? ツムツムで「ツノがあるツム」とはどれが対象なのか?最新情報をお届け ツムツムで条件付きプレイ「毛を結んだツム」一覧を紹介。 併せて、高得点の取り方などのコツも・・・。 ツムツムの「リボンを付けたツム」の一覧と攻略法を紹介中 ツムツムの「ミッキー&フレンズシリーズ」の対象ツムとは?また高得点やコイン稼ぎは? ツムツムの青色のツムと、合わせてみるとお得な情報を掲載しています ツムツムのプリンセスツムについて解説していきます。 一覧と知らないと損する情報まで! ツムツムのビンゴで役に立つ、「恋人を呼ぶツム」をしっかりと解説しましょう! ミッションビンゴ、イベントでは指定されたツムを使ってクリアしなければならないものがあります。 このページでは『赤いツム』の紹介を行います。 ミッションビンゴ、イベントでは指定されたツムを使ってクリアしなければならないものがあります。 このページでは『犬のツム』の紹介を行います。 ミッションビンゴ、イベントでは指定されたツムを使ってクリアしなければならないものがあります。 このページでは『アナと雪の女王シリーズ対象ツム』の紹介を行います。 ミッションビンゴ、イベントでは指定されたツムを使ってクリアしなければならないものがあります。 このページでは『うさぎのツム』の紹介を行います。 ミッションビンゴ、イベントでは指定されたツムを使ってクリアしなければならないものがあります。 このページでは『大きなツム』の紹介を行います。 ミッションビンゴ、イベントでは指定されたツムを使ってクリアしなければならないものがあります。 このページでは『女の子ツム』の紹介を行います。 ミッションビンゴ、イベントでは指定されたツムを使ってクリアしなければならないものがあります。 このページでは『黄色いツム』の紹介を行います。 ミッションビンゴ、イベントでは指定されたツムを使ってクリアしなければならないものがあります。 このページでは『黄色い手のツム』の紹介を行います。 ミッションビンゴ、イベントでは指定されたツムを使ってクリアしなければならないものがあります。 このページでは『黒いツム』の紹介を行います。 ミッションビンゴ、イベントでは指定されたツムを使ってクリアしなければならないものがあります。 このページでは『くちばしのあるツム』の紹介を行います。 ミッションビンゴ、イベントでは指定されたツムを使ってクリアしなければならないものがあります。 このページでは『くまのプーさんシリーズのツム』の紹介を行います。 ミッションビンゴ、イベントでは指定されたツムを使ってクリアしなければならないものがあります。 このページでは『毛のはねたツム』の紹介を行います。 ミッションビンゴ、イベントでは指定されたツムを使ってクリアしなければならないものがあります。 このページでは『しっぽを振るツム』の紹介を行います。 ミッションビンゴ、イベントでは指定されたツムを使ってクリアしなければならないものがあります。 このページでは『恋人を呼ぶツム』の紹介を行います。 ミッションビンゴ、イベントでは指定されたツムを使ってクリアしなければならないものがあります。 このページでは『消去系スキルを持つツム』の紹介を行います。 ミッションビンゴ、イベントでは指定されたツムを使ってクリアしなければならないものがあります。 このページでは『時間を止めるスキルを持つツム』の紹介を行います。 ミッションビンゴ、イベントでは指定されたツムを使ってクリアしなければならないものがあります。 このページでは『縦ライン消去スキルを持つツム』の紹介を行います。 ミッションビンゴ、イベントでは指定されたツムを使ってクリアしなければならないものがあります。 このページでは『中央消去スキルを持つツム』の紹介を行います。 ミッションビンゴ、イベントでは指定されたツムを使ってクリアしなければならないものがあります。 このページでは『ネコ科のツム』の紹介を行います。 ミッションビンゴ、イベントでは指定されたツムを使ってクリアしなければならないものがあります。 このページでは『トイストーリーシリーズのツム』の紹介を行います。 ミッションビンゴ、イベントでは指定されたツムを使ってクリアしなければならないものがあります。 このページでは『友だちを呼ぶスキルを持つツム』の紹介を行います。 ミッションビンゴ、イベントでは指定されたツムを使ってクリアしなければならないものがあります。 このページでは『茶色いツム』の紹介を行います。 ミッションビンゴ、イベントでは指定されたツムを使ってクリアしなければならないものがあります。 このページでは『鼻がピンクのツム』の紹介を行います。 ミッションビンゴ、イベントでは指定されたツムを使ってクリアしなければならないものがあります。 このページでは『バンビシリーズのツム』の紹介を行います。 ミッションビンゴ、イベントでは指定されたツムを使ってクリアしなければならないものがあります。 このページでは『ほっぺが赤いツム』の紹介を行います。 ミッションビンゴ、イベントでは指定されたツムを使ってクリアしなければならないものがあります。 このページでは『帽子をかぶったツム』の紹介を行います。 ミッションビンゴ、イベントでは指定されたツムを使ってクリアしなければならないものがあります。 このページでは『ボムを出すツム』の紹介を行います。 ミッションビンゴ、イベントでは指定されたツムを使ってクリアしなければならないものがあります。 このページでは『まつ毛のあるツム』の紹介を行います。 ミッションビンゴ、イベントでは指定されたツムを使ってクリアしなければならないものがあります。 このページでは『緑のツム』の紹介を行います。 ミッションビンゴ、イベントでは指定されたツムを使ってクリアしなければならないものがあります。 このページでは『横ライン状のツム』の紹介を行います。 ミッションビンゴ、イベントでは指定されたツムを使ってクリアしなければならないものがあります。 このページでは『ラプンツェルシリーズのツム』の紹介を行います。 ミッションビンゴ、イベントでは指定されたツムを使ってクリアしなければならないものがあります。 このページでは『リトルマーメイドシリーズのツム』の紹介を行います。 ミッションビンゴ、イベントでは指定されたツムを使ってクリアしなければならないものがあります。 ミッションビンゴ、イベントでは指定されたツムを使ってクリアしなければならないものがあります。 このページでは『耳がとがったツム』の紹介を行います。 ミッションビンゴ、イベントでは指定されたツムを使ってクリアしなければならないものがあります。 このページでは『耳が垂れたツム』の紹介を行います。 ミッションビンゴ、イベントでは指定されたツムを使ってクリアしなければならないものがあります。 このページでは『まゆ毛のあるツム』の紹介を行います。

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#4 侑くんと日向♀の恋愛感情がない結婚生活(ツムひな稀に影山くん編)

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アイコンをタップすると各ツム毎のタイムボムが発生しやすいスキルレベルが確認できるので、プレイ前に必ずチェックしてください。 毛のはねたツムが使えるミッション 枚数の項目をタップすると対象のカード攻略まとめへ、ミッション名をタップすると、対象のミッション攻略ページに移動できます。 ビンゴミッション 毛のはねたツムの特徴を解説 毛がはねているツムのこと! 毛のはねたツムとは、そのままの意味でツムのどこかしらの毛がはねているツムのことを言います。 毛のはねたツム指定のビンゴ・イベントミッションで活躍してくれます。 その他のモチーフを持つツム一覧 毛のはねた• 掲示板 コミュニティ• ハート交換掲示板• 最新イベント攻略情報• 7月の新ツム評価• ランキング スコアランキング• コイン稼ぎランキング• その他のランキング• ツム一覧 入手方法別ツム一覧• その他• ぬりえミッション ぬりえ攻略一覧• ビンゴカード攻略 ビンゴ攻略一覧• ミッションに役立つツム• よくある質問(Q&A) まずはこれを読もう!• ハートについて• プレイの基本とコツ• コイン稼ぎ• ツムの育成• アイテムについて• ボムについて• チェーンについて• プレイヤー情報・経験値(Exp)• イベント・ガチャ関連• バグ・不具合• エラーコード•

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【ツムツム】毛のはねたツム一覧!ミッション攻略のヒント!

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[chapter:よっぱ侑くんを影山くんが連れて帰ってきた] 玄関のドアを開けたら元カレがぐてんぐてんに酔っ払った旦那を抱えて立っていた。 そんな場面に遭遇したら絶叫しそうなものだが、驚きが臨界点を振り切ると案外、声は喉に詰まって出ないようだった。 つやつやの黒髪がさらりと揺れる。 おれが知るより随分伸びた前髪から覗く顔は、昔にもましてきりりとしているように見えた。 「久しぶりだな」 元カレは腹が立つくらい平然とした様子でそう言った。 「ホントダネ……」 元カレに意地を張った訳ではないのだが、呆然とした調子ながら淡々と返していた。 旦那はほんのり上気した顔で、嫁が元カレと相対していることなんか知らずに、影山の肩に腕を回し半ば抱えられて半分夢の国だ。 「邪魔するぞ」 「う、うん」 元カレはためらいどころかしがらみさえ感じさせずに、旦那を抱え直してずいっと押し入ってくるものだから、思わず通りやすいようドアから身を引いた。 そして旦那を玄関に下ろすと、軽く肩を回しながらおれの方へ振り向いた。 「中まで運ぶか?」 「や、結構です」 どこの国に悲惨な別れ方をした元カレを新居に上がらせるやつがいるだろう。 うっかり玄関まで入れてしまったが、とっととお帰り頂きたいに決まっていた。 そこらへんの感情の機微が、元カレはわかっているのかいないのか、そうかとそっけなく応じると、ゆっくりと踵を返してドアに手をかけた。 「またな」 あんまり自然に言うからつい釣られた。 「おー、またなー」 塩を撒くべきだと気付いたのは、ドアがパタンとそっけなくしまってからだ。 途端にしんと静かになった玄関に、ぽつねんと取り残され、思わず一人、呻いてしまう。 「空気読めねぇどころの話じゃねぇだろ」 どういう神経をしていたら、元カノの今の旦那を抱えて元カノがいるかもしれない新居に向かえるのか。 何を考えてんだとムカムカした直後に、頭の片隅からおれによく似た声が諦めきった平坦な声で、なんも考えちゃいないんだろ、と言った。 全くその通りだろうから、途端に悲しいような悔しいような気持ちが一緒くたに押し寄せて、おれは目が熱くなるのを遮るように手で強引にこする。 あいつと会うといつもこうだ。 悲しかった気持ちが一気にこみ上げて、それでおれの中はいっぱいになってしまう。 楽しかったことも、幸せだと思ったことも、最高だと思った瞬間もあったはずなのに、凍えるほど悲しい雫が胸に一粒、滴り落ちるだけでふわふわとしたものは雪のかけらのように溶けてもう跡形もないのだ。 かじかむ指の冷たさも、どんなに待っても来てくれない苦しさも、もう何年も前のことなのに。 もう過ぎ去ったことのくせに、今も鮮明におれの中に残っている。 涙の気配を無視するべく壁にもたれてぐうすか寝こける旦那の帆をベチベチベチベチ、真っ赤になっても構わずに叩く。 「みゃつむ、おい、起きろよ。 おれ一人じゃベッドまで運べねーぞ」 「うぅん、飛雄くん、もういっぱい……」 「ぶん殴りますよコラ」 けれど嫁のビンタを食らって、ええやん〜、など呻きながらふすふすと笑う旦那をグーで殴るのはなんだか可哀想なので、仕方ないから二の腕を抱えるようにして引っ張った。 「ふぬっ、ふんっ。 ……ダメだ、めっちゃ重い」 するとろくな会話ができなかった旦那がこの言葉だけ反応する。 「太ってへんもん!」 「そういう意味で言ったんじゃないよ……。 いいから起きて。 おれ一人じゃ運んでやれないから」 「ブタやないもん!」 ベソをかいてほっぺたをぷうっと膨らませる金髪の百八十超えの男を前につい、ブタはブタでも喧しブタだよな…と呻いていた。 そうしたらベソが本格化した。 「ブタやあらへんもん〜〜〜〜うええ」 「やめてっ、ブタは撤回するからそれだけはホントやめて!」 不穏な嘔吐き方をする旦那の背中を必死にさする。 それが効きすぎたのか、大惨事は免れたものの、再びほっぺたをぬくぬくと赤くし、気持ちよさそうにうつらうつらと船を漕ぎ始める。 肩を揺すってももう遅い。 その場にでかい図体で丸くなってすうすうと気持ちよさそうな寝息を立てて眠ってしまう。 「もー、しょうがないな」 仕方なく寝室のベッドから布団を持ってくる。 おれたちのうちにはダブルベッドが一つ。 何故ならば、おれが寝るとこぐらい別々でよくね?と言ったら旦那から「ガッキーと星野源はそれで偽装結婚疑われてんで!?」と激しい抗議にあったからである。 そんなわけでたった一枚しかない羽毛ぶとんを、玄関で丸くなる旦那兼同居人にかけてやる。 おれはみゃつむのコートを布団の代わりにして寝ようと思ってのことだというのに、布団をかけてやったら今度はぐずりだすのだ。 「嫌や……このまま寝たない…!」 「じゃあ起きてよ」 「タバコのにおいが……布団臭なる……においとれへん…!」 「主婦かよ」 おれがあんまりズボラなせいで、お洒落イケメンの名前をほしいままにしていた旦那は、同居してからというもの凄まじい勢いで子持ちの主婦と化している気がする。 煙のにおいだなんだが布団につくのがよっぽど嫌だったのだろう。 うーうー唸りながらやっとの事で手をつき起き上がる。 「風呂入るぅ……」 「え、まじか」 おいおい大丈夫かよと言う前に、みゃつむはフローリングの床に足を取られて頭や肩を壁に激しく打ち付けて倒れた。 全く大丈夫ではない。 なんとか助け起こそうと二の腕を引っ張って起こしてやりながら、夏に言い含めるように諭す。 「今日は無理だって。 明日シャワー浴びよ?」 そうしたらめそめそと泣かれた。 「嫌や〜、汗だくのまんま寝たない…っ」 「女子かよ」 全く理屈が通じない。 しかし、飛び跳ねるしか能がないチビが、高級なマンションで人並みに暮らしていけるのは、この陽気な女子高生のようにもパワフルな子持ち主婦にも見える男のおかげだった。 おれはみゃつむに足を向けて寝られないのである。 「しょうがねーなー。 ほら立って」 「うぅ〜」 えっちらおっちら、なんとか自力で立ち上がったみゃつむを横から気休め程度に支えてやりながら風呂場へと連れていく。 みゃつむはおれが開けてやったドアになぜか激突しながら、やっとの事で脱衣所に入る。 「脱がしてやるから、万歳して」 「ん」 「立ったまんま万歳すんなよ。 脱がせるかよ」 ほとんど目をつむったまま、両手を上げるみゃつむをなんとか座らせて上を脱がせると、ズボンのベルトを外しにかかった。 ベルトの金具をカチャカチャ鳴らしながら四苦八苦していると、おれが何をしているように見えたのかみゃつむが嫌そうに唸りだす。 「俺、男も女もダメなんで……」 「どういう状況?」 ものすごく気になるがまずは旦那兼同居人を安心させるべく、何もしないよと頭を撫でると、疑わしげに唸った。 「ほんまぁ〜?」 「ほんまほんま」 「ゆーてホテル連れ込んだりせぇへん?」 「なんて?」 思わず聞き返すと腫れぼったい目にじっとりとねめつけられる。 「女が男を襲ってもごーかんになんねんで〜?」 「なんかすげぇ話聞いちまったな……」 いや襲いませんよと顔の前で手を振ると、みゃつむはその手を握り、指をむにむにと弄る。 「ちっこい指やな」 「話しよ?」 いいから風呂入ろ、と促すとみゃつむははぁーいと間延びした返事をした。 やっとの事でベルトを外す。 ズボンの前をくつろがせて端を掴み、立ってと言うと、みゃつむはごにゃごにゃ何かを言いながら千鳥足で立ち上がった。 旦那とはいえ同居人の裸だ。 だというのにもはやなんとも思わない自分に謎の感動を覚える。 よたよたと風呂場へ足を踏み入れるみゃつむの横をすり抜けて、風呂の蓋を開けてやる。 幸いにもおれがさっきまで入っていたおかげで、お湯はまだ冷めていなかった。 「ほーらお風呂だよ」 「んーーー」 みゃつむは目をほとんど閉じたまま、湯船へ危なげに足を入れる。 そうしたらつるりとした質感のバスタブの底に足を取られて豪快にひっくり返った。 「うわー!? 死ぬなみゃつむ!」 パジャマが濡れるのも構わずに必死に首を掴んでお湯から引き上げる。 人を口から心臓を吐き出させそうなほど驚かせておいて、足を投げ出して溺れかけたみゃつむは、首を締め上げるおれの腕から呑気に頭を巡らせ、髪からお湯をぼたぼた滴らせながら顔を上げると呑気に言うのだ。 「あ、ショヨくんや」 「誰と喋ってるつもりだったんだよ……」 へにゃへにゃと湯船にすがるようにしゃがみ込んでしまう。 するとずぶ濡れになったパジャマの袖を、くいくいっと引かれた。 「なぁなぁ」 「今度はなーにー」 「風呂、一緒に入ろ?」 「ええー」 唸ったものの、濡れ鼠のまま風呂場を出て行く気にならなかった。 「しょーがねーなぁー」 唸るように言いながら、パジャマを脱ぎ捨てる。 みゃつむは嬉しそうに笑っておれの背中に腕を回し、湯船の中へ招き入れた。 みゃつむの目は、ただただ屈託無く細められている。 こんな風にあけすけではないけれど、別の男の前で肌を晒したことがある。 暗がりの中。 闇に溶けそうな真っ黒な目が、暗闇に紛れずてらてらと光った。 焦りも動揺も見せない目が、服を脱いだおれの体を見てそんな風に熱を帯びるのが、頭がくらくらしてどうにかなりそうなのと同時に、ほんの少し、怖かった。 「今日なぁー、飛雄くんといっぱい喋ってん」 「へー、すっげー」 バレーボールをするために未来から送り込まれたようなターミネーターとよくそんなに喋ることがあるもんだなぁと、自分がそいつの元カノであるのを棚に上げて感心したら、みゃつむは頰をとろけそうに赤らめて嬉しそうに言う。 「ショヨくんのこと!」 「え、勘弁して欲しい」 途端になんとも言い難い気分になった。 元カレと現旦那が自分の話をする。 勘弁願いたいものである。 「めっちゃ楽しかったぁ」 「何話してくれたんだよ、もー」 「俺なぁ、飛雄くんのこと好きやねん。 ショヨくんとおんなじ。 なーんか好きやねん」 酔いに任せてなかなか衝撃的な発言をしてくれている気がする。 おれの旦那兼同居人は男も女もどちらも愛せないと言うが、おれからすると男も女も等しく好きなように見える。 目をとろんとつむって今日会ったことを嬉しそうに話す男は、性欲が入り込まない、それだけで全てを諦めている風だった。 でもそう思うのにそれだけのことがあったのだろうから、おれは何かを言う気は無い。 ふぅんと気の無い相槌を打つだけである。 「せやから俺、ショヨくんと飛雄くんがくっついたらええなぁって、ずっと思ってん」 「え、そんなこと思ってたの」 「うん」 旦那も兼ねる同居人はとんでも無いことを子どものような素直さでうなずいてくれる。 おれを唖然とさせておいて、みゃつむは急に眉根を寄せてうめき始めた。 「でもなぁ……。 なぁ、ショヨくん、言うてもええ?」 「いいよ」 「俺、ショヨくんにいつも言うやん。 好きな人できたら別れよ、て。 でもほんまはなぁ、嫌やねん。 ショヨくんに好きな人できたらええなぁって思うんはほんまなんやけど、できなかったらええなぁ、て思てん」 長い指が、おれの手をすくった。 そして性欲を伴わない手つきでおれの手を撫でる。 「俺なぁ、ほんとはずっとショヨくんとこうしてたいねん」 自分でそう言ってすぐに、あかんよなぁ、と自分を嗜める。 「ショヨくんは、誰かを好きになれるのにな……」 そう呻くと湯船に背中を預けてずるずると湯の中へ沈む。 口元まで沈むと、ぶくぶくと水面を泡立たせた。 おれはそれを、珍しい生き物を見るようにぼけーっと見つめていた。 この男は初対面のとき、平然と無視をくれて、かと思ったら試合の終わりにトスを上げてやると一方的に宣言してくれたのである。 殊勝さなど、母親の腹の中におき忘れた風なのに、おれの未来に対してひたすら誠実であろうとする。 指が絡まるままにしていた手に、おれは力を込めて握り返した。 「おれも、みゃつむとずっとこうしてたいよ」 影山といると、どんなに体をぴったりくっつけていたって、ときどき隙間風のような冷たい何かがおれたちの間をふっとすり抜けた。 境目もわからなくなるぐらいだったのに、どうしてそんな寒々しいものが忍び寄るのだろう。 いや、境目がなかったから、そうだったのかもしれない。 境目が消えるぐらい夢中で交わりあって、最後には一つになってしまったから、どうしようもない寂しさが生まれたのかもしれない。 だから無理やり剥がしたら、今度は心がごっそりと削げ落ちてしまった。 後に残ったのは、すうすうと隙間風が吹き抜けるがらんどうなおれの心と、寂しさだけ。 なんだかいろんなものを失くしてしまった気がしたのに、この同居人で、戸籍上はおれの夫である男が隣にいると、隙間風に暖かさが混ざった。 そう思うのは、不思議とこの男だけだった。 「ほんまぁ?」 みゃつむは坐り直すとおれの顔を覗き込む。 おれが逃げずにうなずくと、目を閉じそうなほど細めて笑った。 「嬉しいなぁ」 本当に嬉しいのだろう。 みゃつむは何度も嬉しいを繰り返した。 嬉しいを繰り返しながら、ずるずるとお湯の中に沈んだ。 「わーっ、寝るな! 今寝るなー!」 おれは自分より倍近くでかい男を湯船から引きずり出すのに、風呂場で派手にすっころばねばならなかった。 そうして散々おれに迷惑をかけてくれた男は翌日、因果応報を体現するような二日酔いに襲われていた。 「うう、気持ち悪ぅ……」 「お茶飲む?」 「お願いぃー…」 「はいよー」 湯飲みに緑茶を注いでやり差し出す。 そして昨日のことを尋ねると、なーんも覚えてへん、とさっくりと返ってきた。 「なんも?」 「なーんも。 俺、どうやって帰ってきたん?」 元カレに抱えられて帰ってきたとは言い難かったので、さぁ、と適当に取り繕った。 おれの曖昧な返しにみゃつむは疑問を抱く余裕もないのか、青白い顔で湯飲みに口をつける。 そうしてひと心地がついたのか、思い出したように口を開く。 「ああでも、なんやええ夢見てたのは覚えとるな」 「夢?」 「あったかくてふわふわ揺れて、めっちゃ気持ちよかった」 風呂入ってたことは覚えてんのかな、と思いながらうなずく。 するとみゃつむは何を思い出したのか、ふっと小さく笑った。 「幸せやったな。 夢やけど」 「ふーん」 よかったね、と言うとみゃつむは嬉しそうにうなずいて、けれどすぐに二日酔いが蘇ったのか頭を抱えていた。 [newpage] [chapter:行くぜネズミー!編] 「来たでネズミー!」 入場して約五分。 戸籍上はおれの夫でありながらもその実はただの同居人である男は、頭に動物のキャラクターモチーフの耳をくっつけ、目にはこれまた動物のキャラクターのイメージをあしらったサングラスをかけていた。 首からはポップコーンが入ったでかいケースまで下げている。 同居人はものの五分で入場前の格好が思い出せないほど原型を留めていなかった。 それはおれもおんなじである。 みゃつむにあれも似合う、これも似合う、とごてごてと黄色いクマの耳や黄色いクマモチーフのサングラスをかけさせられた。 プリンセスのドレスを着せられそうになったときはさすがに抵抗した。 幼児向けに売られていたドレスが残酷なことにおれの幼児体型とぴったりだったのである。 プリンセスのドレスが売られていることに感動したみゃつむは、ランドの中に入場したテンションの高さも合間っておれに着せようとしたが、おれは着せ替えまでさせられたものの着るのは拒否したのだ。 それがまだ残念なのか、ファストパスを取りに行く道すがら、みゃつむはいつの間にか買っていたクリスマスツリーのライトをピカピカ光らせ、あからさまに残念そうに唸る。 「はぁ〜〜〜、アナになったショヨくんと歩きたかったわ〜〜〜」 「や、どうせ上からコート着ちゃうから意味ないって」 みゃつむがクリスマスツリーの形をしたライトを持っているように、今日はちょうどクリスマスイブ、冬真っ只中である。 いくらおれが雪国の人間でも外を歩けない格好だ。 もっともらしく言い返したのだがみゃつむはまだ釈然としないらしく唇をアヒルのように尖らせてブツブツと言う。 「言うて大して厚着せぇへんやん、ショヨくん。 それに防寒ならアナが着てたみたいなコート、買うたるし」 「ええ……そんな言うならみゃつむもなんか着ろよ」 仕返しにそう言い返してやるとみゃつむは嫌がるどころかパッと顔を輝かせた。 「ええな! 俺エルサやるわ!」 「まじか」 思わず雪の女王をやるみゃつむを想像し、なんとも言い難い気持ちになった。 「ヤだな……ごつい肩のガンダムみたいな足した巨人のエルサと歩くの……」 「ええやん、筋肉で解決する系の雪の女王。 俺のサーブで全ての悲劇を回避や!」 「回避ってゆーか、撃退ってゆーか」 「ほんなら何が俺に似合うと思うん?」 「美女と野獣」 「お、野獣か?」 「ううん。 ガストン」 「しばくぞ」 握りこぶしを握られたがそれで殴られることはなかった。 それだけ喋ってもうすっかり満足したのだろう。 「あ! ドナおる!」 着ぐるみがちょこちょこと歩いているのを見かけると、未練なんかすっかり忘れた風に駆けて行った。 おれは慌ててその背中を追いかけた。 アヒルのキャラクターにほっぺたをくっつけてぎゅうっと抱きしめる百八十超えの男をはいチーズで撮ってやった後、そばに控えていたキャストのお姉さんにデジカメを預けて、今度はおれもまざって写真を撮ってもらった。 その画像をアトラクションへと続く長い待機列の中で待つ。 「初デートがネズミーやとあかんの、なんか実感したわ」 「ふーん?」 「よっぽど気ぃ合わへんと、すぐ嫌になるな」 「ヤになった?」 「サム以外と来たのがショヨくんでよかったなぁ、って思ったとこ」 そう言うとアヒルの口をした笛を口に咥えて、ぶーっと鳴らした。 そしておれがもつデジカメを指差して小さく失笑する。 「ショヨくん、目ぇつむっとる」 「あ、ほんとだ」 着ぐるみを挟んでみゃつむと小さい順に並んで撮った写真で、おれは一番前にいるのにピースをしながら目をぎゅっとつむっていた。 おれはそれを見下ろしながら昔、違う男とを遊園地に行ったことを思い出していた。 男は最後の最後でこんなん乗って何が楽しいかわからねぇとのたまいやがり、そのときのおれは持っていたバッグで横っ面をぶん殴るぐらいキレたものであったが。 こうして過ぎてしまえば、何が楽しいのかわからないくせに最後まではしゃぐおれに付き合ってくれたのだから、もしかしたら随分と大事にされていたのではないかとぼんやり思うのだった。 「ショヨくん、前」 指先で肩をトントンと叩かれ、慌てて後に続く。 みゃつむはポケットからスマートフォンを取り出すとイヤホンのコードを指して、イヤホンの片方を差し出した。 「こんなこともあろうかと、映画ダウンロードしといてん」 「おお、準備がいい」 「やろー?」 「なんの映画?」 「デデンデンデデンするやつの2」 「ネズミーいっこも関係ない」 とはいえおれもケータイの着メロにするぐらい大好きな映画である。 すぐに夢中になって、このシーン好き、ここが熱い、と言い合いながら長い列を進む。 そうして乗った滝から落ちるやつや、お化けが住む洋館探索は待ち時間のことなんか忘れるぐらい楽しかった。 「あー、おもろかった!」 みゃつむはアトラクションの外を歩くたびに屋台の食べ物を見つけては買って、すぐ食い飽きる。 みゃつむの食い残しをむぐむぐ食べながら後に続くと、お城の前の大きな広場の前でピタリと足を止める。 「せやった。 ネズミー来たらここで自撮りしてインスタ上げな」 そう言ってスマートフォンを取り出すとおれの肩を抱き寄せた。 「おれ、まだ食ってるよ」 「ヘーキヘーキ。 それよかほっぺにちゅーしてええ?」 「別にいーけど」 「ほんじゃま、ちょいと失礼」 みゃつむはスマートフォンを持った手をまっすぐに伸ばすと、おれの食べかすが豪快に飛び散ったほっぺたにちゅっとした。 そしてすぐに顔を上げると、おれのほっぺたを服の袖で拭い、撮ったばかりの画像を確認する。 「逆光やけどあからさまなのよりええか。 ポチッとな」 おれは残ったチェロスを一口で頬張ると尋ねる。 「それ、ネットにアップしてどうすんの?」 「カップルはシンデレラ城の前でちゅーした写真をネットにアップするもんなんやって」 「ふーん?」 「俺もよぉ知らんけど、それでカップルの証明になるんなら安いもんやろ。 何より金かからへんし」 「おれもちゅうする?」 「口、ぬぐったらな」 そう言っておれの口元を親指の腹でぐっとぬぐってみゃつむは笑った。 そうしてカリブの海賊で海賊気分をたっぷりと味わい外に出ると、早いものでもう日が傾いていた。 ちらほらと街灯に明かりが灯っている。 昼とはまた違った空気になる園内を眺め、ぽけーっとしていると隣でみゃつむが腕時計を見下ろし声を上げた。 「あかん! パレードまで時間あらへんやん。 早よ夕飯買うて場所取りせな!」 行くで!とみゃつむに腕を引かれ、近くでバーガーと飲み物を買う。 それを持って通路の端まで来ると、みゃつむは背負っていたリュックからシートを取り出した。 「準備いいな!」 「これ見ぃひんとネズミー来た気、せぇへんやろ?」 二人が並んで座れる程度にシートを広げるとそこに座る。 そうするのはおれたちだけでなく、たくさんの人が通路の端に座り込んでいた。 おれは早速バーガーにかじりつくと、ふぅと息をつく。 「おれ、こうやってパレード見んの初めて」 「パレードにアトラクション乗り回す派?」 「うん。 それで、パレードに出くわしたらお父さんに肩車してもらうの」 キラキラと人ごみの向こうを過ぎるパレードに夢中になって、父さんの髪をぎゅうっと鷲掴みにした感触が、手のひらに甦る。 「パレード、何時から?」 「んー、あと二時間後やな」 「また待つのかー」 「ネズミーの宿命やな」 そう言いながらみゃつむが取り出したのはタブレットだった。 「今度はなんの映画?」 「過去行って未来行ってさらなる過去へ行く映画の三部作やで」 「おー、六時間は時間潰せる」 またイヤホンを半分こし、みゃつむの二の腕に頭を預けながら映画を見る。 そうしてあたりが夜へ沈んでゆくのを横目で伺ううちに、二の腕がやけにすうすうしだした。 なんとなしに腕をさすってごまかしていると、おれがもぞもぞするのが鬱陶しかったのかみゃつむが気づいた。 「なんや。 ショヨくん、寒いん?」 「わかんない」 「腕さすってんねんから寒いんやろ。 ショヨくん、こっちおいで」 みゃつむは立てた膝の間をぽんぽんと叩いた。 ヘーキ、と首を振ると脇から抱え上げられて脚の間に座らせられる。 そしておれを自分の胸によっかからせたままダウンの前のジッパーをおれの顎の裏まで引き上げた。 のし、とみゃつむの顎がおれの頭に乗せられる。 「珍しくキンキンに冷えとるな。 ホテル帰る?」 二日連続で遊ぶために、園内にあるホテルをとってある。 でもアトラクションに並ぶ間、ずっとパレードのことを話していたみゃつむが思い出されて、おれは首を振っていた。 「辛うなったらすぐ言うんやで」 「うん」 おれはうなずくと口元をダウンの中に埋める。 みゃつむはおれの頭の上に顔を乗せたまま、何か言いたげだったがそれ以上何も言わなかった。 ほどなくしてパレードが始まる。 キラキラと輝く行進に目を奪われて、寒いのも忘れてしまった。 パレードが終わると余韻に浸ることもなく、みゃつむはおれの腕を引いてホテルへ戻った。 そして部屋に入るなり、部屋の中のバスタブにお湯を溜める。 そしてお湯がたまるなり風呂場へ突っ込まれた。 「みゃつむも入る?」 「せやな、俺もキンキンに冷えてもうたし、ショヨくんがええなら入ろか」 いつからか、肌を見せることに抵抗がなくなった。 前から薄ぼんやりと、温泉に浸かっているところにみゃつむが来ても驚いたりしないんだろうな、と思っていたけれど、それはただの事実だったようだ。 みゃつむはぱしゃりとお湯で顔を洗うと尋ねる。 「今日、どやった?」 「むっちゃ楽しかった」 また落ちるときみゃつむとつないだ手を振り上げて落っこちたい、と言うとみゃつむはええーと声を上げた。 「楽しくない?」 「あれむっちゃ怖いんやもん」 「おれ、すっげー楽しいけどな」 「そうなん? ほんなら、次もかんばろか」 そうしてみゃつむは気合を入れるように勢いよく湯船に潜ると、ざばあとお湯を揺らして頭を出した。 そして前髪をかきあげると腕を伸ばしてシャンプーを手に取り、お湯に浸かったまま頭を洗い出す。 「うお、いいのか」 「ええやろ。 残り湯、洗濯に使わへんし」 「あ、そっか」 おれが納得している間にみゃつむは頭を泡だて終えると桶で湯船の中のお湯を掬い頭から被った。 そして次におれの頭をお湯で流す。 「おわー」 「頭、洗ったる」 「おー」 あわあわあわあわ。 あっという間にお風呂は即席の泡風呂になる。 体も泡で洗って最後にバスタブの栓を抜く。 シャワーで体を流すとみゃつむはバスローブ、おれはいつも通りパジャマを着た。 「あったまった?」 「うん」 返事をしながら、背中をしつこく忍び寄る寒気に気づかないふりをした。 けれどおれは最後まで逃げ切れず。 ベッドに入ってしばらくもしないうちに、寒気に背中からのしかかられた。 どこもかしこもすうすうとする。 どんなに丸くなっても指先や手足が冷たいままなのだ。 夢ともつかない眠りの中で縮こまりながら、どこか他人事のようにやだなと思う。 思い出してしまうからだ。 かじかむ指を何度も擦り合わせて暖かい息を吹きかけ、暗闇を睨むように見つめていたこと。 もう来ないことはなんとなく知っていた気がするのに、おれは意地だけでそこに立っていた。 雪がちらつき出す。 あとしばらくもしないうちに、前を真っ白に染めるのだろう。 そうとわかっていても、おれは。 ある瞬間を境に意地がプツンと千切れ、寂しい、と途方もなくなったところで、目が覚めた。 喉がぜいぜいとする。 ただ、苦しい。 見慣れない天井をぼうっと見つめ、ややあって酷い咳で目が覚めたのがわかった。 自分がそれまで何をしていて、どうしてこんなに苦しいのか思い至る前に、大きな手がおれのおでこから前髪を払うように撫でた。 ギシギシと痛む体でなんとか手が伸びる方へ首を傾けようとすると、胸元のあたりからピピっと電子音がした。 おれの頭を撫でた手が、おれの脇から何かを引き抜いた。 それは体温計だった。 ぼうっと見上げていると、笑っているとも呆れているともつかない声が言った。 「風邪やな」 その声を聞いてようやく、おれは夢の国に旦那兼同居人と遊びに来ていたことを思い出した。 「まじかー……」 手がまた、おれの頭を撫でて笑う。 「雪国育ちのショヨくんが寒がった時点でもうあかんかったんやろな」 そうして布団を首元までたくし上げてくれた。 「なんか食える? ルームサービス頼むけど。 スープやったら飲めるんちゃう?」 「うん……」 朦朧とうなずきながら、なんとか口を開く。 「遊んで来て、いーよ」 「うん?」 「今日、しー、行くってゆってた」 旅行の準備を進める間、ずっとみゃつむは楽しそうだった。 ホテルをとって、どんな風に遊んで。 おれはそんなに興味はなかったはずなのに、聞いているうちにおれまで楽しくなってしまった。 聞いてるだけでそうなるのだから、話した方は本当に楽しみだっただろう。 おれのせいでせっかくの一日が無駄になろうとしている。 そう思うと体と一緒に胸がギシギシする気がした。 みゃつむはまた笑った。 「俺は気にせんと。 ショヨくんは早よ風邪治さな」 みゃつむは電話でルームサービスを頼む。 ほどなくして、スープが運ばれた。 おれをベッドから起こすとスープを飲むのも手伝ってくれる。 みゃつむは高いホテルはサービスがええなぁ、と言って風邪薬をくれた。 体温計と一緒にもらって来てくれたようだった。 「おれのこと、気にしなくていいから、」 「はいはい」 みゃつむはあやすようにおれをベッドへ寝かせると、おれのおでこを軽く叩いた。 「ちゃんと楽しんどくから、安心しぃ」 「うん」 行ってから、ほんの少し心もとなくなった。 目をつむれば、おれはまたあの夢を見るのだろう。 待ち人が来ない待ち合わせの夢。 その夢から覚めたとき、部屋で一人ぼっちだったらと思うと、寂しさがじわじわとこみ上げた。 おれはいつも、寂しさを押し隠そうとする。 傷ついたことも、泣いたことも。 涙を知られるとひどく惨めだった。 けれど、身を削ぐような日々を経てじゃれ合うばかりの穏やかな時間を過ごして見ると、ひた隠しにしたことが途端に寂しいように思えた。 意地を張る相手だって、もういないのに。 試合を終えたコートの中。 負けたのに、おれだけ負けを認められずにコートから出られないでいる。 もう誰もコートの中にはいないのに、おれ一人だけ終わらせられない。 眠りの浅いところをうつらうつらと漂う。 何度か目を覚まし、窓の外をぼうっと見つめた。 日が傾くのを見るのが嫌できつく目をつむる。 そうして寝ては目覚めるのを繰り返す。 そしていよいよ日が傾いたとき、窓の前には外で遊んでいるはずのみゃつむが窓辺に頬杖をついてそこにいた。 まだ夢を見ているのかしら。 そう思ってぼんやりとみゃつむを眺める。 するとしばらくして、みゃつむはおれの視線に気づいて顔を上げた。 視線が合うとみゃつむは人懐っこく笑う。 目ぇ覚めたん?」 おれは呆然とした心地でうなずいた。 「もう、帰って来たの?」 「うん?」 質問の意図がくめなかったようで、みゃつむは不思議そうに首を傾げる。 おれを助け起こしながらようやく得心がいったのか、ああ、と声を漏らす。 「レトルトのお粥とかもろもろ買いに行ってただけやで」 「え、なんで」 「なんでて、なんで?」 「別に一人で遊ぶぐらい、へーきそうだし……」 みゃつむはぽかんと惚けたあと、声を上げて笑った。 「そんなサイコパスに見えるかも知らへんけど、俺は風邪で苦しんどる嫁ちゃんおいてシーは行かへんな」 そしてベッドに座るとおもむろに話し始める。 「双子の風邪て、共倒れが基本やねん」 「うん」 「せやから俺がインフルかかるときは、大抵サムもインフル発症してな。 同じ部屋に閉じ込められて、隔離されんねん」 「へー…」 「実家出てみて気づいてんけど、俺が病気で苦しむときは大抵横でサムももんどり打ってん。 それがもう当たり前やったんやろなぁ。 ショヨくんと逃げ恥的に結婚したあと風邪引いてみたら、もー寂しくって寂しくって震えてしゃあないねん」 みゃつむが風邪を引いたとき、いつも通り大学へ行って帰って来たら、寝室で寝ているはずのみゃつむがわざわざ這い出して来て息も絶え絶えにおかえりを言って来て、おれはゾンビを前にしたように絶叫した。 あの恐ろしいまでの必死さは寂しさに故だと知ったら、途端に申し訳なくなった。 「ご、ごめん……」 「ええて。 学生は勉強するんが本分やし」 気にするなと手を振ってからりと笑う。 「俺が一人でもヘーキそうに見えんのは、要はサムがおるからなんやろなぁ。 俺がガンガン自分の意見貫いて周りから総スカン食らっても、サムだけは絶対残んねん。 言い換えれば、ほんまに一人になったことがあらへん」 「うん」 「せやからキミ」 「おれ?」 自分を指差すと、みゃつむはうんとうなずく。 「俺でさえ女子からお誘い受けるんやから、サムかてお誘い受けるわな。 いくら女子限定でコミュ障やったとしても、そのうち上手く付き合える女子が出てくるやろ。 そうして所帯持つやん。 したらいよいよ俺は一人になる。 っちゅーわけで、キミ」 「おれ」 「多分やけど、究極のさみしがり屋やねん、俺」 「まじかー」 おれの中のみゃつむという人間は、大抵一人で楽しそうにしているから、あっけにとられてしまった。 「おれとんでもねーのと籍入れちゃったんかな……」 「フッフ。 簡単には逃がさへんで」 みゃつむはわざとらしいキメ顔を作ると、すぐに口元を緩めて、おれの手を軽く叩いた。 「そんだけの話や」 途端に、おれの心は今日まで暗い夜道で待ちぼうけを食らったままなのだと気づいた。 ずっと冷たい風が吹きすさぶ中に意地だけで待っていたから、雪が降っていたのも気づかなかった。 そこへこの男が通りすがったのだ。 街灯の下で待ちぼうけるおれをの心を見つけて不思議そうな顔をしながら、さしていた傘をおれの方へ傾けた。 おれの心はようやく、自分が震えて今にも泣きそうなのに気づいたのだった。 「それよか、ちょうどええとき目ぇ覚ましたな。 もうすぐ夜のパレードが始まんで」 おれの肩に自分のパーカーをかけながら、窓辺の椅子へ招くと部屋の中の明かりを消した。 暗くなった部屋の窓から外を覗くと、花火がちょうど上がるところだった。 赤い光、青い光。 夜を裂くように光が飛び、夜空へ弾ける。 あまりに綺麗で、おれの心の中で張り詰めていた糸のようなものが、ふつりと千切れた。 それはおれの心の重さで千切れたのではなく、自ら切ったようだった。 気づいてしまえば、あとは溢れるばかりだった。 「ふ、ふぇぇぇー…っ」 「え、ショヨくん?」 綺麗やなーと頰を緩めていたみゃつむは、おれが椅子の上で膝を抱えて涙をぼろぼろこぼしているのに気づくと、ぎょっと目を剥いた。 「か、感動したんか? 昨日はめっちゃ冷静にエレクトリカルパレード見とったんに? あ、それともあれか、腹が痛なったんか?」 みゃつむはおれのそばに膝をつくと、背中を摩る。 心配そうにおれの顔を覗き込むみゃつむの首におれはしがみつくと一層泣きじゃくった。 「ま、待ってたの。 ホントはずっと、待ってたの」 「ま、待ってた? 何を?」 「来るの、待ってたの……うぇぇぇー…ん」 「ええ……わけわからん……」 みゃつむがなんとも言い難そうに呻くのを耳元で聞く。 けれどみゃつむはおれがどんなに涙を溢そうが、鼻水をだらだら流そうが引き剥がそうとはしなかった。 「ま、ええか」 そう嘆息すると、おれのことを抱え上げて椅子に座りなおす。 そして慰めるようにおれの頭を軽く叩いた。 「俺ら、お互いに色々あったなぁ」 何があったとは言わなかった。 何があったとも聞かなかった。 「せやけどもう大丈夫や」 柔らかく低い声が、涙で溢れるおれの心に静かに染みる。 「ショヨくんが総スカン食らっても、俺だけは最後まで隣におるから、せやから安心しぃ」 待ちぼうけするおれの元に、ようやく人が来た。 その人はおれが待つ人ではなかったけれど、人懐っこく笑いながら何しとんの?と尋ねるから、待ちぼうけしたことがただの笑い話のように思えて苦しくなくなった。 「ぉ、おれも」 「うん?」 「ずっといる」 泣きじゃくりながら、ずっとみゃつむの味方でいる、と言ったらみゃつむは酔っ払って夢見心地だった時とおんなじように嬉しそうに目を細めた。 「ほんま? 嬉しいなぁ」 また来ような、とみゃつむは言う。 おれはうなずいた。 そのあと、ウサギみたいに目を腫らして、ベッドで眠った。 寂しさはもう、すうすうと吹き込んで来ることはなかった。 [chapter:よっぱ侑くんを影山くんが連れて帰ってきた] 玄関のドアを開けたら元カレがぐてんぐてんに酔っ払った旦那を抱えて立っていた。 そんな場面に遭遇したら絶叫しそうなものだが、驚きが臨界点を振り切ると案外、声は喉に詰まって出ないようだった。 つやつやの黒髪がさらりと揺れる。 おれが知るより随分伸びた前髪から覗く顔は、昔にもましてきりりとしているように見えた。 「久しぶりだな」 元カレは腹が立つくらい平然とした様子でそう言った。 「ホントダネ……」 元カレに意地を張った訳ではないのだが、呆然とした調子ながら淡々と返していた。 旦那はほんのり上気した顔で、嫁が元カレと相対していることなんか知らずに、影山の肩に腕を回し半ば抱えられて半分夢の国だ。 「邪魔するぞ」 「う、うん」 元カレはためらいどころかしがらみさえ感じさせずに、旦那を抱え直してずいっと押し入ってくるものだから、思わず通りやすいようドアから身を引いた。 そして旦那を玄関に下ろすと、軽く肩を回しながらおれの方へ振り向いた。 「中まで運ぶか?」 「や、結構です」 どこの国に悲惨な別れ方をした元カレを新居に上がらせるやつがいるだろう。 うっかり玄関まで入れてしまったが、とっととお帰り頂きたいに決まっていた。 そこらへんの感情の機微が、元カレはわかっているのかいないのか、そうかとそっけなく応じると、ゆっくりと踵を返してドアに手をかけた。 「またな」 あんまり自然に言うからつい釣られた。 「おー、またなー」 塩を撒くべきだと気付いたのは、ドアがパタンとそっけなくしまってからだ。 途端にしんと静かになった玄関に、ぽつねんと取り残され、思わず一人、呻いてしまう。 「空気読めねぇどころの話じゃねぇだろ」 どういう神経をしていたら、元カノの今の旦那を抱えて元カノがいるかもしれない新居に向かえるのか。 何を考えてんだとムカムカした直後に、頭の片隅からおれによく似た声が諦めきった平坦な声で、なんも考えちゃいないんだろ、と言った。 全くその通りだろうから、途端に悲しいような悔しいような気持ちが一緒くたに押し寄せて、おれは目が熱くなるのを遮るように手で強引にこする。 あいつと会うといつもこうだ。 悲しかった気持ちが一気にこみ上げて、それでおれの中はいっぱいになってしまう。 楽しかったことも、幸せだと思ったことも、最高だと思った瞬間もあったはずなのに、凍えるほど悲しい雫が胸に一粒、滴り落ちるだけでふわふわとしたものは雪のかけらのように溶けてもう跡形もないのだ。 かじかむ指の冷たさも、どんなに待っても来てくれない苦しさも、もう何年も前のことなのに。 もう過ぎ去ったことのくせに、今も鮮明におれの中に残っている。 涙の気配を無視するべく壁にもたれてぐうすか寝こける旦那の帆をベチベチベチベチ、真っ赤になっても構わずに叩く。 「みゃつむ、おい、起きろよ。 おれ一人じゃベッドまで運べねーぞ」 「うぅん、飛雄くん、もういっぱい……」 「ぶん殴りますよコラ」 けれど嫁のビンタを食らって、ええやん〜、など呻きながらふすふすと笑う旦那をグーで殴るのはなんだか可哀想なので、仕方ないから二の腕を抱えるようにして引っ張った。 「ふぬっ、ふんっ。 ……ダメだ、めっちゃ重い」 するとろくな会話ができなかった旦那がこの言葉だけ反応する。 「太ってへんもん!」 「そういう意味で言ったんじゃないよ……。 いいから起きて。 おれ一人じゃ運んでやれないから」 「ブタやないもん!」 ベソをかいてほっぺたをぷうっと膨らませる金髪の百八十超えの男を前につい、ブタはブタでも喧しブタだよな…と呻いていた。 そうしたらベソが本格化した。 「ブタやあらへんもん〜〜〜〜うええ」 「やめてっ、ブタは撤回するからそれだけはホントやめて!」 不穏な嘔吐き方をする旦那の背中を必死にさする。 それが効きすぎたのか、大惨事は免れたものの、再びほっぺたをぬくぬくと赤くし、気持ちよさそうにうつらうつらと船を漕ぎ始める。 肩を揺すってももう遅い。 その場にでかい図体で丸くなってすうすうと気持ちよさそうな寝息を立てて眠ってしまう。 「もー、しょうがないな」 仕方なく寝室のベッドから布団を持ってくる。 おれたちのうちにはダブルベッドが一つ。 何故ならば、おれが寝るとこぐらい別々でよくね?と言ったら旦那から「ガッキーと星野源はそれで偽装結婚疑われてんで!?」と激しい抗議にあったからである。 そんなわけでたった一枚しかない羽毛ぶとんを、玄関で丸くなる旦那兼同居人にかけてやる。 おれはみゃつむのコートを布団の代わりにして寝ようと思ってのことだというのに、布団をかけてやったら今度はぐずりだすのだ。 「嫌や……このまま寝たない…!」 「じゃあ起きてよ」 「タバコのにおいが……布団臭なる……においとれへん…!」 「主婦かよ」 おれがあんまりズボラなせいで、お洒落イケメンの名前をほしいままにしていた旦那は、同居してからというもの凄まじい勢いで子持ちの主婦と化している気がする。 煙のにおいだなんだが布団につくのがよっぽど嫌だったのだろう。 うーうー唸りながらやっとの事で手をつき起き上がる。 「風呂入るぅ……」 「え、まじか」 おいおい大丈夫かよと言う前に、みゃつむはフローリングの床に足を取られて頭や肩を壁に激しく打ち付けて倒れた。 全く大丈夫ではない。 なんとか助け起こそうと二の腕を引っ張って起こしてやりながら、夏に言い含めるように諭す。 「今日は無理だって。 明日シャワー浴びよ?」 そうしたらめそめそと泣かれた。 「嫌や〜、汗だくのまんま寝たない…っ」 「女子かよ」 全く理屈が通じない。 しかし、飛び跳ねるしか能がないチビが、高級なマンションで人並みに暮らしていけるのは、この陽気な女子高生のようにもパワフルな子持ち主婦にも見える男のおかげだった。 おれはみゃつむに足を向けて寝られないのである。 「しょうがねーなー。 ほら立って」 「うぅ〜」 えっちらおっちら、なんとか自力で立ち上がったみゃつむを横から気休め程度に支えてやりながら風呂場へと連れていく。 みゃつむはおれが開けてやったドアになぜか激突しながら、やっとの事で脱衣所に入る。 「脱がしてやるから、万歳して」 「ん」 「立ったまんま万歳すんなよ。 脱がせるかよ」 ほとんど目をつむったまま、両手を上げるみゃつむをなんとか座らせて上を脱がせると、ズボンのベルトを外しにかかった。 ベルトの金具をカチャカチャ鳴らしながら四苦八苦していると、おれが何をしているように見えたのかみゃつむが嫌そうに唸りだす。 「俺、男も女もダメなんで……」 「どういう状況?」 ものすごく気になるがまずは旦那兼同居人を安心させるべく、何もしないよと頭を撫でると、疑わしげに唸った。 「ほんまぁ〜?」 「ほんまほんま」 「ゆーてホテル連れ込んだりせぇへん?」 「なんて?」 思わず聞き返すと腫れぼったい目にじっとりとねめつけられる。 「女が男を襲ってもごーかんになんねんで〜?」 「なんかすげぇ話聞いちまったな……」 いや襲いませんよと顔の前で手を振ると、みゃつむはその手を握り、指をむにむにと弄る。 「ちっこい指やな」 「話しよ?」 いいから風呂入ろ、と促すとみゃつむははぁーいと間延びした返事をした。 やっとの事でベルトを外す。 ズボンの前をくつろがせて端を掴み、立ってと言うと、みゃつむはごにゃごにゃ何かを言いながら千鳥足で立ち上がった。 旦那とはいえ同居人の裸だ。 だというのにもはやなんとも思わない自分に謎の感動を覚える。 よたよたと風呂場へ足を踏み入れるみゃつむの横をすり抜けて、風呂の蓋を開けてやる。 幸いにもおれがさっきまで入っていたおかげで、お湯はまだ冷めていなかった。 「ほーらお風呂だよ」 「んーーー」 みゃつむは目をほとんど閉じたまま、湯船へ危なげに足を入れる。 そうしたらつるりとした質感のバスタブの底に足を取られて豪快にひっくり返った。 「うわー!? 死ぬなみゃつむ!」 パジャマが濡れるのも構わずに必死に首を掴んでお湯から引き上げる。 人を口から心臓を吐き出させそうなほど驚かせておいて、足を投げ出して溺れかけたみゃつむは、首を締め上げるおれの腕から呑気に頭を巡らせ、髪からお湯をぼたぼた滴らせながら顔を上げると呑気に言うのだ。 「あ、ショヨくんや」 「誰と喋ってるつもりだったんだよ……」 へにゃへにゃと湯船にすがるようにしゃがみ込んでしまう。 するとずぶ濡れになったパジャマの袖を、くいくいっと引かれた。 「なぁなぁ」 「今度はなーにー」 「風呂、一緒に入ろ?」 「ええー」 唸ったものの、濡れ鼠のまま風呂場を出て行く気にならなかった。 「しょーがねーなぁー」 唸るように言いながら、パジャマを脱ぎ捨てる。 みゃつむは嬉しそうに笑っておれの背中に腕を回し、湯船の中へ招き入れた。 みゃつむの目は、ただただ屈託無く細められている。 こんな風にあけすけではないけれど、別の男の前で肌を晒したことがある。 暗がりの中。 闇に溶けそうな真っ黒な目が、暗闇に紛れずてらてらと光った。 焦りも動揺も見せない目が、服を脱いだおれの体を見てそんな風に熱を帯びるのが、頭がくらくらしてどうにかなりそうなのと同時に、ほんの少し、怖かった。 「今日なぁー、飛雄くんといっぱい喋ってん」 「へー、すっげー」 バレーボールをするために未来から送り込まれたようなターミネーターとよくそんなに喋ることがあるもんだなぁと、自分がそいつの元カノであるのを棚に上げて感心したら、みゃつむは頰をとろけそうに赤らめて嬉しそうに言う。 「ショヨくんのこと!」 「え、勘弁して欲しい」 途端になんとも言い難い気分になった。 元カレと現旦那が自分の話をする。 勘弁願いたいものである。 「めっちゃ楽しかったぁ」 「何話してくれたんだよ、もー」 「俺なぁ、飛雄くんのこと好きやねん。 ショヨくんとおんなじ。 なーんか好きやねん」 酔いに任せてなかなか衝撃的な発言をしてくれている気がする。 おれの旦那兼同居人は男も女もどちらも愛せないと言うが、おれからすると男も女も等しく好きなように見える。 目をとろんとつむって今日会ったことを嬉しそうに話す男は、性欲が入り込まない、それだけで全てを諦めている風だった。 でもそう思うのにそれだけのことがあったのだろうから、おれは何かを言う気は無い。 ふぅんと気の無い相槌を打つだけである。 「せやから俺、ショヨくんと飛雄くんがくっついたらええなぁって、ずっと思ってん」 「え、そんなこと思ってたの」 「うん」 旦那も兼ねる同居人はとんでも無いことを子どものような素直さでうなずいてくれる。 おれを唖然とさせておいて、みゃつむは急に眉根を寄せてうめき始めた。 「でもなぁ……。 なぁ、ショヨくん、言うてもええ?」 「いいよ」 「俺、ショヨくんにいつも言うやん。 好きな人できたら別れよ、て。 でもほんまはなぁ、嫌やねん。 ショヨくんに好きな人できたらええなぁって思うんはほんまなんやけど、できなかったらええなぁ、て思てん」 長い指が、おれの手をすくった。 そして性欲を伴わない手つきでおれの手を撫でる。 「俺なぁ、ほんとはずっとショヨくんとこうしてたいねん」 自分でそう言ってすぐに、あかんよなぁ、と自分を嗜める。 「ショヨくんは、誰かを好きになれるのにな……」 そう呻くと湯船に背中を預けてずるずると湯の中へ沈む。 口元まで沈むと、ぶくぶくと水面を泡立たせた。 おれはそれを、珍しい生き物を見るようにぼけーっと見つめていた。 この男は初対面のとき、平然と無視をくれて、かと思ったら試合の終わりにトスを上げてやると一方的に宣言してくれたのである。 殊勝さなど、母親の腹の中におき忘れた風なのに、おれの未来に対してひたすら誠実であろうとする。 指が絡まるままにしていた手に、おれは力を込めて握り返した。 「おれも、みゃつむとずっとこうしてたいよ」 影山といると、どんなに体をぴったりくっつけていたって、ときどき隙間風のような冷たい何かがおれたちの間をふっとすり抜けた。 境目もわからなくなるぐらいだったのに、どうしてそんな寒々しいものが忍び寄るのだろう。 いや、境目がなかったから、そうだったのかもしれない。 境目が消えるぐらい夢中で交わりあって、最後には一つになってしまったから、どうしようもない寂しさが生まれたのかもしれない。 だから無理やり剥がしたら、今度は心がごっそりと削げ落ちてしまった。 後に残ったのは、すうすうと隙間風が吹き抜けるがらんどうなおれの心と、寂しさだけ。 なんだかいろんなものを失くしてしまった気がしたのに、この同居人で、戸籍上はおれの夫である男が隣にいると、隙間風に暖かさが混ざった。 そう思うのは、不思議とこの男だけだった。 「ほんまぁ?」 みゃつむは坐り直すとおれの顔を覗き込む。 おれが逃げずにうなずくと、目を閉じそうなほど細めて笑った。 「嬉しいなぁ」 本当に嬉しいのだろう。 みゃつむは何度も嬉しいを繰り返した。 嬉しいを繰り返しながら、ずるずるとお湯の中に沈んだ。 「わーっ、寝るな! 今寝るなー!」 おれは自分より倍近くでかい男を湯船から引きずり出すのに、風呂場で派手にすっころばねばならなかった。 そうして散々おれに迷惑をかけてくれた男は翌日、因果応報を体現するような二日酔いに襲われていた。 「うう、気持ち悪ぅ……」 「お茶飲む?」 「お願いぃー…」 「はいよー」 湯飲みに緑茶を注いでやり差し出す。 そして昨日のことを尋ねると、なーんも覚えてへん、とさっくりと返ってきた。 「なんも?」 「なーんも。 俺、どうやって帰ってきたん?」 元カレに抱えられて帰ってきたとは言い難かったので、さぁ、と適当に取り繕った。 おれの曖昧な返しにみゃつむは疑問を抱く余裕もないのか、青白い顔で湯飲みに口をつける。 そうしてひと心地がついたのか、思い出したように口を開く。 「ああでも、なんやええ夢見てたのは覚えとるな」 「夢?」 「あったかくてふわふわ揺れて、めっちゃ気持ちよかった」 風呂入ってたことは覚えてんのかな、と思いながらうなずく。 するとみゃつむは何を思い出したのか、ふっと小さく笑った。 「幸せやったな。 夢やけど」 「ふーん」 よかったね、と言うとみゃつむは嬉しそうにうなずいて、けれどすぐに二日酔いが蘇ったのか頭を抱えていた。 [newpage][chapter:行くぜネズミー!編] 「来たでネズミー!」 入場して約五分。 戸籍上はおれの夫でありながらもその実はただの同居人である男は、頭に動物のキャラクターモチーフの耳をくっつけ、目にはこれまた動物のキャラクターのイメージをあしらったサングラスをかけていた。 首からはポップコーンが入ったでかいケースまで下げている。 同居人はものの五分で入場前の格好が思い出せないほど原型を留めていなかった。 それはおれもおんなじである。 みゃつむにあれも似合う、これも似合う、とごてごてと黄色いクマの耳や黄色いクマモチーフのサングラスをかけさせられた。 プリンセスのドレスを着せられそうになったときはさすがに抵抗した。 幼児向けに売られていたドレスが残酷なことにおれの幼児体型とぴったりだったのである。 プリンセスのドレスが売られていることに感動したみゃつむは、ランドの中に入場したテンションの高さも合間っておれに着せようとしたが、おれは着せ替えまでさせられたものの着るのは拒否したのだ。 それがまだ残念なのか、ファストパスを取りに行く道すがら、みゃつむはいつの間にか買っていたクリスマスツリーのライトをピカピカ光らせ、あからさまに残念そうに唸る。 「はぁ〜〜〜、アナになったショヨくんと歩きたかったわ〜〜〜」 「や、どうせ上からコート着ちゃうから意味ないって」 みゃつむがクリスマスツリーの形をしたライトを持っているように、今日はちょうどクリスマスイブ、冬真っ只中である。 いくらおれが雪国の人間でも外を歩けない格好だ。 もっともらしく言い返したのだがみゃつむはまだ釈然としないらしく唇をアヒルのように尖らせてブツブツと言う。 「言うて大して厚着せぇへんやん、ショヨくん。 それに防寒ならアナが着てたみたいなコート、買うたるし」 「ええ……そんな言うならみゃつむもなんか着ろよ」 仕返しにそう言い返してやるとみゃつむは嫌がるどころかパッと顔を輝かせた。 「ええな! 俺エルサやるわ!」 「まじか」 思わず雪の女王をやるみゃつむを想像し、なんとも言い難い気持ちになった。 「ヤだな……ごつい肩のガンダムみたいな足した巨人のエルサと歩くの……」 「ええやん、筋肉で解決する系の雪の女王。 俺のサーブで全ての悲劇を回避や!」 「回避ってゆーか、撃退ってゆーか」 「ほんなら何が俺に似合うと思うん?」 「美女と野獣」 「お、野獣か?」 「ううん。 ガストン」 「しばくぞ」 握りこぶしを握られたがそれで殴られることはなかった。 それだけ喋ってもうすっかり満足したのだろう。 「あ! ドナおる!」 着ぐるみがちょこちょこと歩いているのを見かけると、未練なんかすっかり忘れた風に駆けて行った。 おれは慌ててその背中を追いかけた。 アヒルのキャラクターにほっぺたをくっつけてぎゅうっと抱きしめる百八十超えの男をはいチーズで撮ってやった後、そばに控えていたキャストのお姉さんにデジカメを預けて、今度はおれもまざって写真を撮ってもらった。 その画像をアトラクションへと続く長い待機列の中で待つ。 「初デートがネズミーやとあかんの、なんか実感したわ」 「ふーん?」 「よっぽど気ぃ合わへんと、すぐ嫌になるな」 「ヤになった?」 「サム以外と来たのがショヨくんでよかったなぁ、って思ったとこ」 そう言うとアヒルの口をした笛を口に咥えて、ぶーっと鳴らした。 そしておれがもつデジカメを指差して小さく失笑する。 「ショヨくん、目ぇつむっとる」 「あ、ほんとだ」 着ぐるみを挟んでみゃつむと小さい順に並んで撮った写真で、おれは一番前にいるのにピースをしながら目をぎゅっとつむっていた。 おれはそれを見下ろしながら昔、違う男とを遊園地に行ったことを思い出していた。 男は最後の最後でこんなん乗って何が楽しいかわからねぇとのたまいやがり、そのときのおれは持っていたバッグで横っ面をぶん殴るぐらいキレたものであったが。 こうして過ぎてしまえば、何が楽しいのかわからないくせに最後まではしゃぐおれに付き合ってくれたのだから、もしかしたら随分と大事にされていたのではないかとぼんやり思うのだった。 「ショヨくん、前」 指先で肩をトントンと叩かれ、慌てて後に続く。 みゃつむはポケットからスマートフォンを取り出すとイヤホンのコードを指して、イヤホンの片方を差し出した。 「こんなこともあろうかと、映画ダウンロードしといてん」 「おお、準備がいい」 「やろー?」 「なんの映画?」 「デデンデンデデンするやつの2」 「ネズミーいっこも関係ない」 とはいえおれもケータイの着メロにするぐらい大好きな映画である。 すぐに夢中になって、このシーン好き、ここが熱い、と言い合いながら長い列を進む。 そうして乗った滝から落ちるやつや、お化けが住む洋館探索は待ち時間のことなんか忘れるぐらい楽しかった。 「あー、おもろかった!」 みゃつむはアトラクションの外を歩くたびに屋台の食べ物を見つけては買って、すぐ食い飽きる。 みゃつむの食い残しをむぐむぐ食べながら後に続くと、お城の前の大きな広場の前でピタリと足を止める。 「せやった。 ネズミー来たらここで自撮りしてインスタ上げな」 そう言ってスマートフォンを取り出すとおれの肩を抱き寄せた。 「おれ、まだ食ってるよ」 「ヘーキヘーキ。 それよかほっぺにちゅーしてええ?」 「別にいーけど」 「ほんじゃま、ちょいと失礼」 みゃつむはスマートフォンを持った手をまっすぐに伸ばすと、おれの食べかすが豪快に飛び散ったほっぺたにちゅっとした。 そしてすぐに顔を上げると、おれのほっぺたを服の袖で拭い、撮ったばかりの画像を確認する。 「逆光やけどあからさまなのよりええか。 ポチッとな」 おれは残ったチェロスを一口で頬張ると尋ねる。 「それ、ネットにアップしてどうすんの?」 「カップルはシンデレラ城の前でちゅーした写真をネットにアップするもんなんやって」 「ふーん?」 「俺もよぉ知らんけど、それでカップルの証明になるんなら安いもんやろ。 何より金かからへんし」 「おれもちゅうする?」 「口、ぬぐったらな」 そう言っておれの口元を親指の腹でぐっとぬぐってみゃつむは笑った。 そうしてカリブの海賊で海賊気分をたっぷりと味わい外に出ると、早いものでもう日が傾いていた。 ちらほらと街灯に明かりが灯っている。 昼とはまた違った空気になる園内を眺め、ぽけーっとしていると隣でみゃつむが腕時計を見下ろし声を上げた。 「あかん! パレードまで時間あらへんやん。 早よ夕飯買うて場所取りせな!」 行くで!とみゃつむに腕を引かれ、近くでバーガーと飲み物を買う。 それを持って通路の端まで来ると、みゃつむは背負っていたリュックからシートを取り出した。 「準備いいな!」 「これ見ぃひんとネズミー来た気、せぇへんやろ?」 二人が並んで座れる程度にシートを広げるとそこに座る。 そうするのはおれたちだけでなく、たくさんの人が通路の端に座り込んでいた。 おれは早速バーガーにかじりつくと、ふぅと息をつく。 「おれ、こうやってパレード見んの初めて」 「パレードにアトラクション乗り回す派?」 「うん。 それで、パレードに出くわしたらお父さんに肩車してもらうの」 キラキラと人ごみの向こうを過ぎるパレードに夢中になって、父さんの髪をぎゅうっと鷲掴みにした感触が、手のひらに甦る。 「パレード、何時から?」 「んー、あと二時間後やな」 「また待つのかー」 「ネズミーの宿命やな」 そう言いながらみゃつむが取り出したのはタブレットだった。 「今度はなんの映画?」 「過去行って未来行ってさらなる過去へ行く映画の三部作やで」 「おー、六時間は時間潰せる」 またイヤホンを半分こし、みゃつむの二の腕に頭を預けながら映画を見る。 そうしてあたりが夜へ沈んでゆくのを横目で伺ううちに、二の腕がやけにすうすうしだした。 なんとなしに腕をさすってごまかしていると、おれがもぞもぞするのが鬱陶しかったのかみゃつむが気づいた。 「なんや。 ショヨくん、寒いん?」 「わかんない」 「腕さすってんねんから寒いんやろ。 ショヨくん、こっちおいで」 みゃつむは立てた膝の間をぽんぽんと叩いた。 ヘーキ、と首を振ると脇から抱え上げられて脚の間に座らせられる。 そしておれを自分の胸によっかからせたままダウンの前のジッパーをおれの顎の裏まで引き上げた。 のし、とみゃつむの顎がおれの頭に乗せられる。 「珍しくキンキンに冷えとるな。 ホテル帰る?」 二日連続で遊ぶために、園内にあるホテルをとってある。 でもアトラクションに並ぶ間、ずっとパレードのことを話していたみゃつむが思い出されて、おれは首を振っていた。 「辛うなったらすぐ言うんやで」 「うん」 おれはうなずくと口元をダウンの中に埋める。 みゃつむはおれの頭の上に顔を乗せたまま、何か言いたげだったがそれ以上何も言わなかった。 ほどなくしてパレードが始まる。 キラキラと輝く行進に目を奪われて、寒いのも忘れてしまった。 パレードが終わると余韻に浸ることもなく、みゃつむはおれの腕を引いてホテルへ戻った。 そして部屋に入るなり、部屋の中のバスタブにお湯を溜める。 そしてお湯がたまるなり風呂場へ突っ込まれた。 「みゃつむも入る?」 「せやな、俺もキンキンに冷えてもうたし、ショヨくんがええなら入ろか」 いつからか、肌を見せることに抵抗がなくなった。 前から薄ぼんやりと、温泉に浸かっているところにみゃつむが来ても驚いたりしないんだろうな、と思っていたけれど、それはただの事実だったようだ。 みゃつむはぱしゃりとお湯で顔を洗うと尋ねる。 「今日、どやった?」 「むっちゃ楽しかった」 また落ちるときみゃつむとつないだ手を振り上げて落っこちたい、と言うとみゃつむはええーと声を上げた。 「楽しくない?」 「あれむっちゃ怖いんやもん」 「おれ、すっげー楽しいけどな」 「そうなん? ほんなら、次もかんばろか」 そうしてみゃつむは気合を入れるように勢いよく湯船に潜ると、ざばあとお湯を揺らして頭を出した。 そして前髪をかきあげると腕を伸ばしてシャンプーを手に取り、お湯に浸かったまま頭を洗い出す。 「うお、いいのか」 「ええやろ。 残り湯、洗濯に使わへんし」 「あ、そっか」 おれが納得している間にみゃつむは頭を泡だて終えると桶で湯船の中のお湯を掬い頭から被った。 そして次におれの頭をお湯で流す。 「おわー」 「頭、洗ったる」 「おー」 あわあわあわあわ。 あっという間にお風呂は即席の泡風呂になる。 体も泡で洗って最後にバスタブの栓を抜く。 シャワーで体を流すとみゃつむはバスローブ、おれはいつも通りパジャマを着た。 「あったまった?」 「うん」 返事をしながら、背中をしつこく忍び寄る寒気に気づかないふりをした。 けれどおれは最後まで逃げ切れず。 ベッドに入ってしばらくもしないうちに、寒気に背中からのしかかられた。 どこもかしこもすうすうとする。 どんなに丸くなっても指先や手足が冷たいままなのだ。 夢ともつかない眠りの中で縮こまりながら、どこか他人事のようにやだなと思う。 思い出してしまうからだ。 かじかむ指を何度も擦り合わせて暖かい息を吹きかけ、暗闇を睨むように見つめていたこと。 もう来ないことはなんとなく知っていた気がするのに、おれは意地だけでそこに立っていた。 雪がちらつき出す。 あとしばらくもしないうちに、前を真っ白に染めるのだろう。 そうとわかっていても、おれは。 ある瞬間を境に意地がプツンと千切れ、寂しい、と途方もなくなったところで、目が覚めた。 喉がぜいぜいとする。 ただ、苦しい。 見慣れない天井をぼうっと見つめ、ややあって酷い咳で目が覚めたのがわかった。 自分がそれまで何をしていて、どうしてこんなに苦しいのか思い至る前に、大きな手がおれのおでこから前髪を払うように撫でた。 ギシギシと痛む体でなんとか手が伸びる方へ首を傾けようとすると、胸元のあたりからピピっと電子音がした。 おれの頭を撫でた手が、おれの脇から何かを引き抜いた。 それは体温計だった。 ぼうっと見上げていると、笑っているとも呆れているともつかない声が言った。 「風邪やな」 その声を聞いてようやく、おれは夢の国に旦那兼同居人と遊びに来ていたことを思い出した。 「まじかー……」 手がまた、おれの頭を撫でて笑う。 「雪国育ちのショヨくんが寒がった時点でもうあかんかったんやろな」 そうして布団を首元までたくし上げてくれた。 「なんか食える? ルームサービス頼むけど。 スープやったら飲めるんちゃう?」 「うん……」 朦朧とうなずきながら、なんとか口を開く。 「遊んで来て、いーよ」 「うん?」 「今日、しー、行くってゆってた」 旅行の準備を進める間、ずっとみゃつむは楽しそうだった。 ホテルをとって、どんな風に遊んで。 おれはそんなに興味はなかったはずなのに、聞いているうちにおれまで楽しくなってしまった。 聞いてるだけでそうなるのだから、話した方は本当に楽しみだっただろう。 おれのせいでせっかくの一日が無駄になろうとしている。 そう思うと体と一緒に胸がギシギシする気がした。 みゃつむはまた笑った。 「俺は気にせんと。 ショヨくんは早よ風邪治さな」 みゃつむは電話でルームサービスを頼む。 ほどなくして、スープが運ばれた。 おれをベッドから起こすとスープを飲むのも手伝ってくれる。 みゃつむは高いホテルはサービスがええなぁ、と言って風邪薬をくれた。 体温計と一緒にもらって来てくれたようだった。 「おれのこと、気にしなくていいから、」 「はいはい」 みゃつむはあやすようにおれをベッドへ寝かせると、おれのおでこを軽く叩いた。 「ちゃんと楽しんどくから、安心しぃ」 「うん」 行ってから、ほんの少し心もとなくなった。 目をつむれば、おれはまたあの夢を見るのだろう。 待ち人が来ない待ち合わせの夢。 その夢から覚めたとき、部屋で一人ぼっちだったらと思うと、寂しさがじわじわとこみ上げた。 おれはいつも、寂しさを押し隠そうとする。 傷ついたことも、泣いたことも。 涙を知られるとひどく惨めだった。 けれど、身を削ぐような日々を経てじゃれ合うばかりの穏やかな時間を過ごして見ると、ひた隠しにしたことが途端に寂しいように思えた。 意地を張る相手だって、もういないのに。 試合を終えたコートの中。 負けたのに、おれだけ負けを認められずにコートから出られないでいる。 もう誰もコートの中にはいないのに、おれ一人だけ終わらせられない。 眠りの浅いところをうつらうつらと漂う。 何度か目を覚まし、窓の外をぼうっと見つめた。 日が傾くのを見るのが嫌できつく目をつむる。 そうして寝ては目覚めるのを繰り返す。 そしていよいよ日が傾いたとき、窓の前には外で遊んでいるはずのみゃつむが窓辺に頬杖をついてそこにいた。 まだ夢を見ているのかしら。 そう思ってぼんやりとみゃつむを眺める。 するとしばらくして、みゃつむはおれの視線に気づいて顔を上げた。 視線が合うとみゃつむは人懐っこく笑う。 目ぇ覚めたん?」 おれは呆然とした心地でうなずいた。 「もう、帰って来たの?」 「うん?」 質問の意図がくめなかったようで、みゃつむは不思議そうに首を傾げる。 おれを助け起こしながらようやく得心がいったのか、ああ、と声を漏らす。 「レトルトのお粥とかもろもろ買いに行ってただけやで」 「え、なんで」 「なんでて、なんで?」 「別に一人で遊ぶぐらい、へーきそうだし……」 みゃつむはぽかんと惚けたあと、声を上げて笑った。 「そんなサイコパスに見えるかも知らへんけど、俺は風邪で苦しんどる嫁ちゃんおいてシーは行かへんな」 そしてベッドに座るとおもむろに話し始める。 「双子の風邪て、共倒れが基本やねん」 「うん」 「せやから俺がインフルかかるときは、大抵サムもインフル発症してな。 同じ部屋に閉じ込められて、隔離されんねん」 「へー…」 「実家出てみて気づいてんけど、俺が病気で苦しむときは大抵横でサムももんどり打ってん。 それがもう当たり前やったんやろなぁ。 ショヨくんと逃げ恥的に結婚したあと風邪引いてみたら、もー寂しくって寂しくって震えてしゃあないねん」 みゃつむが風邪を引いたとき、いつも通り大学へ行って帰って来たら、寝室で寝ているはずのみゃつむがわざわざ這い出して来て息も絶え絶えにおかえりを言って来て、おれはゾンビを前にしたように絶叫した。 あの恐ろしいまでの必死さは寂しさに故だと知ったら、途端に申し訳なくなった。 「ご、ごめん……」 「ええて。 学生は勉強するんが本分やし」 気にするなと手を振ってからりと笑う。 「俺が一人でもヘーキそうに見えんのは、要はサムがおるからなんやろなぁ。 俺がガンガン自分の意見貫いて周りから総スカン食らっても、サムだけは絶対残んねん。 言い換えれば、ほんまに一人になったことがあらへん」 「うん」 「せやからキミ」 「おれ?」 自分を指差すと、みゃつむはうんとうなずく。 「俺でさえ女子からお誘い受けるんやから、サムかてお誘い受けるわな。 いくら女子限定でコミュ障やったとしても、そのうち上手く付き合える女子が出てくるやろ。 そうして所帯持つやん。 したらいよいよ俺は一人になる。 っちゅーわけで、キミ」 「おれ」 「多分やけど、究極のさみしがり屋やねん、俺」 「まじかー」 おれの中のみゃつむという人間は、大抵一人で楽しそうにしているから、あっけにとられてしまった。 「おれとんでもねーのと籍入れちゃったんかな……」 「フッフ。 簡単には逃がさへんで」 みゃつむはわざとらしいキメ顔を作ると、すぐに口元を緩めて、おれの手を軽く叩いた。 「そんだけの話や」 途端に、おれの心は今日まで暗い夜道で待ちぼうけを食らったままなのだと気づいた。 ずっと冷たい風が吹きすさぶ中に意地だけで待っていたから、雪が降っていたのも気づかなかった。 そこへこの男が通りすがったのだ。 街灯の下で待ちぼうけるおれをの心を見つけて不思議そうな顔をしながら、さしていた傘をおれの方へ傾けた。 おれの心はようやく、自分が震えて今にも泣きそうなのに気づいたのだった。 「それよか、ちょうどええとき目ぇ覚ましたな。 もうすぐ夜のパレードが始まんで」 おれの肩に自分のパーカーをかけながら、窓辺の椅子へ招くと部屋の中の明かりを消した。 暗くなった部屋の窓から外を覗くと、花火がちょうど上がるところだった。 赤い光、青い光。 夜を裂くように光が飛び、夜空へ弾ける。 あまりに綺麗で、おれの心の中で張り詰めていた糸のようなものが、ふつりと千切れた。 それはおれの心の重さで千切れたのではなく、自ら切ったようだった。 気づいてしまえば、あとは溢れるばかりだった。 「ふ、ふぇぇぇー…っ」 「え、ショヨくん?」 綺麗やなーと頰を緩めていたみゃつむは、おれが椅子の上で膝を抱えて涙をぼろぼろこぼしているのに気づくと、ぎょっと目を剥いた。 「か、感動したんか? 昨日はめっちゃ冷静にエレクトリカルパレード見とったんに? あ、それともあれか、腹が痛なったんか?」 みゃつむはおれのそばに膝をつくと、背中を摩る。 心配そうにおれの顔を覗き込むみゃつむの首におれはしがみつくと一層泣きじゃくった。 「ま、待ってたの。 ホントはずっと、待ってたの」 「ま、待ってた? 何を?」 「来るの、待ってたの……うぇぇぇー…ん」 「ええ……わけわからん……」 みゃつむがなんとも言い難そうに呻くのを耳元で聞く。 けれどみゃつむはおれがどんなに涙を溢そうが、鼻水をだらだら流そうが引き剥がそうとはしなかった。 「ま、ええか」 そう嘆息すると、おれのことを抱え上げて椅子に座りなおす。 そして慰めるようにおれの頭を軽く叩いた。 「俺ら、お互いに色々あったなぁ」 何があったとは言わなかった。 何があったとも聞かなかった。 「せやけどもう大丈夫や」 柔らかく低い声が、涙で溢れるおれの心に静かに染みる。 「ショヨくんが総スカン食らっても、俺だけは最後まで隣におるから、せやから安心しぃ」 待ちぼうけするおれの元に、ようやく人が来た。 その人はおれが待つ人ではなかったけれど、人懐っこく笑いながら何しとんの?と尋ねるから、待ちぼうけしたことがただの笑い話のように思えて苦しくなくなった。 「ぉ、おれも」 「うん?」 「ずっといる」 泣きじゃくりながら、ずっとみゃつむの味方でいる、と言ったらみゃつむは酔っ払って夢見心地だった時とおんなじように嬉しそうに目を細めた。 「ほんま? 嬉しいなぁ」 また来ような、とみゃつむは言う。 おれはうなずいた。 そのあと、ウサギみたいに目を腫らして、ベッドで眠った。 寂しさはもう、すうすうと吹き込んで来ることはなかった。

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