しょう いん しん 腫れ。 わかりやすい漢方薬解説・漢方理論解説

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しょう いん しん 腫れ

生薬( 中薬)の性質と関連する 病証 性質 作用 対象となる 病証 寒/涼 熱を下げる。 火邪を取り除く。 毒素を取り除く。 陰虚証。 熱/温 体内を温める。 寒邪を追い出す。 陽を強める。 陽虚証。 平 熱を取り除き、内部を温める2つの作用をより穏やかに行う。 すべての病証。 【薬味】…苦 まず心に入ります。 この上位5つの味は 五臓(内臓)とも関連があり、次のような性質があります。 生薬( 中薬)の味と関連する 病証 味 作用 対象となる 病証 対象 五臓 辛(辛味) 消散する/移動させる。 体を温め、発散作用。 気滞証。 血瘀証。 肺に作用。 酸(酸味)すっぱい。 縮小させる(収縮・固渋作用)。 虚に起因する発汗。 虚に起因する出血。 慢性的な下痢。 尿失禁。 肝に作用。 甘(甘味) 補う。 解毒する。 軽減する。 薬能の調整。 緊張緩和・滋養強壮作用。 脾に作用。 鹹(塩味)塩辛い。 軟化と排除。 大腸を滑らかにする。 しこりを和らげる軟化作用。 リンパ系その他のシステムが戦っているときの腫れ。 腎に作用。 苦(苦味) 上逆する気を戻す。 湿邪を乾燥させる。 気血の働きを活性化させる。 熱をとって固める作用。 咳・嘔吐・停滞が原因の便秘。 排尿障害。 水湿証。 肺気の停滞に起因する咳。 血瘀証。 心に作用。 淡(淡味) 利尿。 水湿証。 臨床面では茵蔯蒿及び主剤にした茵蔯蒿湯は伝染性肝炎及び黄疸の治療に対して極めて有効であるとの報告が多数ある。 また茵蔯蒿湯は胆汁分泌が正常でない患者に対して、 bilirubin量の分泌を増大し胆汁分泌を正常にする作用がある。 この利胆作用は構成生薬である茵蔯蒿湯では僅に認められるが、大黄に僅少、山梔子にはなくこれらの生薬を配合することで初めて顕著な利胆作用を発現する。 【用途】…消炎利尿剤、利胆薬として黄疸、伝染性肝炎に用いられる。 生薬は、薬草を現代医学により分析し、効果があると確認された有効成分を利用する薬です。 生薬のほとんどは「日本薬局方」に薬として載せられているので、医師が保険のきく薬として処方する場合もあります。 中薬は、本場中国における漢方薬の呼び名です。 薬草単体で使用するときを中薬、複数組み合わせるときは、方剤と呼び分けることもあります。 本来中薬は、患者個人の証に合わせて成分を調整して作るものですが、方剤の処方を前もって作成した錠剤や液剤が数多く発売されています。 これらは、 中成薬と呼ばれています。 従って、中国の中成薬と日本の漢方エキス剤は、ほぼ同様な医薬品といえます。 2.【本草経集注】(西暦500年頃) 斉代の500年頃に著された 陶弘景(とうこうけい)の『本草経集注(しっちゅう)』です。 掲載する生薬の数は、『神農本草経』(112年)の2倍に増えました。 松溪論畫圖 仇英(吉林省博物館藏) 陶弘景(456~536年)は、中国 南北朝時代(420~589年)の文人、思想家、医学者です。 江蘇省句容県の人です。 茅山という山中に隠棲し、 陰陽五行、山川地理、天文気象にも精通しており、国の吉凶や、祭祀、討伐などの大事が起こると、朝廷が人を遣わして陶弘景に教えを請いました。 そのために 山中宰相と呼ばれました。 庭に松を植える風習は陶弘景からはじまり、 松風の音をこよなく愛したものも陶弘景が最初です。 風が吹くと喜び勇んで庭に下り立ち、松風の音に耳をかたむける陶弘景の姿はまさに仙人として人々の目に映ったことでしょう。 3.【本草項目】(西暦1578年) 30年近い歳月を費やして明代の1578年に完成された 李時珍(りじちん)の『本草項目』です。 掲載する生薬の数は、約1900種に増えました。 『本草綱目』は、1590年代に金陵 南京 で出版され、その後も版を重ねました。 わが国でも、徳川家康が愛読したほか、薬物学の基本文献として尊重され、小野蘭山陵『本草綱目啓蒙』など多くの注釈書、研究書が著されています。 本草綱目は日本などの周辺諸国のみならず、ラテン語などのヨーロッパ語にも訳されて、世界の博物学・本草学に大きな影響を与えています。 儒者・林羅山(1583~1657年)の旧蔵書 李時珍(1518~1593年)は、中国 明時代(1368~1644年)の中国・明の医師で本草学者。 中国本草学の集大成とも呼ぶべき『本草綱目』や奇経や脉診の解説書である『瀕湖脉学』、『奇経八脉考』を著した。 湖北省圻春県圻州鎮の医家の生まれです。 科挙の郷試に失敗し、家にあって古来の漢方薬学書を研究しました。 30歳頃からあきたらくなって各地を旅行し調査したり文献を集めたりはじめます。 ついに自分の研究成果や新しい分類法を加え、30年の間に3度書き改めて、1578年『本草綱目』を著して、中国本草学を確立させました。 【薬用部分】….

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蜂窩織炎(ほうかしきえん)の原因・治療・再発や予防ー抗生剤は効く?

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皮膚がさまざまな刺激や接触を受け、そこに体質的な要因が加わることによって、皮膚に反応が起こることがあります。 湿疹や皮膚炎などと呼ばれる、このような皮膚疾患は、何らかの原因によって皮膚表面の機能が障害を受けて発生します。 漢方では「皮膚は内臓の鏡」と考えられており、体質的な素因にも左右されやすいのですが、治療をするときは、まず皮膚の状態を見極めるようにします。 よく皮膚を観察すると、かゆみの強いものや水気を含んだもの、腫れがあるものなど、症状は一様でないことがわかります。 こうした症状の現れ方から、次の4つのタイプに分けて治療をします。 1つは、かゆみの強い症状です。 かゆみは「風邪[ふうじゃ]」の影響を受けて発生すると漢方では考えています。 健康な皮膚を風のような速さでかゆみが襲うことから、かゆみは風[ふう]の影響による症状と考えたのです。 2つめは、ジクジク型の症状です。 患部に水を多く含んでいるこうした症状は、「湿邪[しつじゃ]」の影響を受けていると判断します。 3つめは、発赤型の症状です。 患部に赤みがあり、炎症が強く出ている場合には、「熱邪[ねつじゃ]」の影響を受けていると考えます。 4つめはカサカサ型の症状です。 1~3の症状が長く続いて慢性化してくると、体内の栄養物質(血:けつ)が不足し、カサカサした症状へと変化していきます。 患部が乾燥性であることから、栄養物質(血:けつ)や潤い物質(津液:しんえき)の不足による皮膚症状と判断します。 このように、大きく4つのタイプに分けられますが、実際は、これらの症状は重複的に表れることが大半です。 どの症状が強いかを判断して薬を使い分けることが大切になります。 こんな方にはこの処方がおすすめです•

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取扱商品|香川県高松市の漢方薬局 不妊の相談は山田薬局まつかわ漢方堂

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肝(かん)のはたらき 漢方(中医学)における肝の主なはたらきは気・血(けつ)・津液(しんえき)の巡りをコントロールすることです。 特に気と血の巡りに強く関係しています。 これらの流れを調節するはたらきを疏泄(そせつ)と呼びます。 それ以外にも肝は血をためたり、精神状態の安定化にも貢献しています。 他にも肝は眼、爪、筋肉のはたらきやその状態を支えています。 肝の異常 肝において起こる代表的な異常として肝気鬱結(かんきうっけつ)、肝気横逆(かんきおうぎゃく)、肝血虚(かんけっきょ)、肝陰虚(かんいんきょ)、肝陽上亢(かんようじょうこう)、肝陽化風(かんようかふう)、血虚生風(けっきょせいふう)、肝火上炎(かんかじょうえん)、熱極生風(ねつきょくせいふう)、寒滞肝脈(かんたいかんみゃく)、肝胆湿熱(かんたんしつねつ)などが挙げられます。 肝のトラブルは刻々と変化するものが多く、他の臓腑とまたがった問題も起こりやすいので、その内容はやや複雑です。 肝気鬱結(かんきうっけつ)とは 肝は五臓六腑(ごぞうろっぷ)のなかでも精神的なストレスの悪影響を受けやすい臓です。 強いストレスを継続的に受け続けると肝の気や血を巡らすはたらきである疏泄がうまくゆかなくなってしまいます。 結果的に疏泄が失調してしまうと気滞(きたい)や瘀血(おけつ)が起こってしまいます。 肝気鬱結の具体的な症状としてはイライラ感や気分の落ち込み、過度な緊張、ヒステリー、喉のつまり感、胸苦しさ、腹部の張り感、女性の場合は生理不順や生理痛といった症状が現れやすくなります。 肝気鬱結の状態が長引くと肝に蓄えられている血が消耗してしまい、肝血虚(かんけっきょ)や肝陰虚(かんいんきょ)も進行してしまいます。 肝をいたわる漢方薬の多くには柴胡(さいこ)と芍薬(しゃくやく)という生薬が含まれています。 柴胡は気の巡りを改善する力に優れ、芍薬は不足した肝の血を補うことで失調した肝の状態を回復させます。 柴胡と芍薬を含む代表的な漢方薬には逍遥散(しょうようさん)や加味逍遥散(かみしょうようさん)、四逆散(しぎゃくさん)、柴胡疎肝湯(さいこそかんとう)などが挙げられます。 これらの漢方薬は精神状態を安定させ、イライラ感や不安感を緩和する力に優れています。 肝気横逆(かんきおうぎゃく)とは 肝にトラブルが起きると他の臓腑にも悪影響が及びます。 特に肝が不調に陥ることで気の巡りが悪くなると、その影響を最も受けてしまうのが脾(ひ)と胃です。 脾と胃は消化器全般のはたらきを担っている臓腑です。 したがって、 肝が不調に陥ると二次的に食欲不振、吐気や嘔吐、胃や腹部の痛み、下痢や便秘といった胃腸障害が起こりやすくなります。 この状態を肝気横逆(かんきおうぎゃく)と呼びます。 西洋医学的には神経性胃腸炎や過敏性腸症候群の多くに肝気横逆が絡んでいるといえます。 これらはストレスの強さにくわえて日頃から胃腸がデリケートな方が陥りやすいので注意が必要です。 肝の異常はこの他にも数多く存在しますが、これら肝気鬱結と肝気横逆はもっとも遭遇することの多いトラブルといえます。 肝気横逆を改善する漢方薬は逍遥散(しょうようさん)、四逆散(しぎゃくさん)、小柴胡湯(しょうさいことう)、大柴胡湯(だいさいことう)などが代表的です。 肝血虚(かんけっきょ)とは 肝血虚とは肝に供給される血や肝に蓄えられている血が不足している状態を指します。 この場合、肝のみの血が不足しているわけではなく、全身的な血が不足している上で肝の血虚がより顕著なケースを指しています。 肝血虚の具体的な症状としては眼精疲労、視力低下、まぶしさ、めまい、立ちくらみ、爪や肌の荒れ、抜け毛、筋肉のけいれん、こむらがえり、ひきつり、生理不順などが挙げられます。 肝血虚を改善する漢方薬は四物湯(しもつとう)や八珍湯(はっちんとう)などが代表的です。 基本的に肝血虚に対しては一般的な血虚にもちいられる漢方薬が使用されます。 肝陰虚(かんいんきょ)とは 肝陰虚とは肝血虚の状態にくわえて津液も不足している状態を指します。 血と津液は気の持つ熱性を適度にクールダウンするはたらきがあります。 その機能が低下することによって相対的に熱性が増してしまったのが肝陰虚です。 肝陰虚の具体的な症状としては手足のほてり感、寝汗、口の渇き、ドライアイなどの症状が肝血虚の症状に加わります。 肝陰虚はしばしば、腎陰虚(じんいんきょ)と併発することがあり、その状態を肝腎陰虚(かんじんいんきょ)と呼びます。 肝腎陰虚に陥ると肝陰虚の症状にくわえて腰や膝の重だるさ、頭のふらつき、記憶力の低下などが現れます。 肝陰虚を改善する漢方薬は六味地黄丸(ろくみじおうがん)、肝腎陰虚もみられるようなら杞菊地黄丸(こきくじおうがん)が適しています。 症状によっては肝血虚にもちいられる四物湯(しもつとう)などとの併用も考えられます。 肝陽上亢(かんようじょうこう) 肝陽上亢とは肝陰虚にともなって現れる上半身(特に頭部)を中心とした不快症状が顕著な状態を指します。 肝陽上亢の具体的な症状としてはめまい、ふらつき、耳鳴り、頭痛、顔のほてり感、眼の充血、イライラ感などの症状が肝陰虚の症状と重複して現れます。 肝陽上亢を改善する漢方薬は釣藤散(ちょうとうさん)、杞菊地黄丸(こきくじおうがん)、七物降下湯(しちもつこうかとう)、加味逍遥散(かみしょうようさん)などが代表的です。 肝陽化風(かんようかふう)とは 肝陽化風とは上記の肝陽上亢(つまりは肝陰虚)がさらに進行したものです。 肝陽化風の具体的な症状としては激しいめまい、頭痛、手足のふるえやしびれ、筋肉のけいれん、ろれつが回らない、症状が重い場合は半身不随、歩行困難、顔面神経麻痺なども起こることもあります。 肝陽化風を改善する漢方薬は釣藤散(ちょうとうさん)や抑肝散(よくかんさん)などが代表的です。 肝陰虚の症状も顕著な場合は上記の漢方薬に六味地黄丸(ろくみじおうがん)、や杞菊地黄丸(こきくじおうがん)との併用も考えられます。 血虚生風(けっきょせいふう)とは 血虚生風とは肝血虚が進行したために筋肉のはたらきや肌の状態などを維持できなくなっている病能を指します。 血虚生風の具体的な症状としては筋肉のひきつり、無意識下でのピクピクした筋肉の動き、手足のふるえやしびれ、肌の乾燥とかゆみ、肌の青白さ、眼精疲労、眼のかすみなどが挙げられます。 血虚生風のなかで筋肉系のトラブルに対しては七物降下湯(しちもつこうかとう)、肌のトラブルに対しては当帰飲子(とうきいんし)などが代表的です。 肝火上炎(かんかじょうえん)とは 肝火上炎とは主に肝気鬱結が長期化したことで現れる病態であり、上半身を中心に激しい症状を特徴とします。 肝火上炎の具体的な症状としては強いイライラ感、暴力的な怒り、激しい頭痛、突然の耳鳴りや難聴、めまい、眼の充血、不眠などが挙げられます。 肝火上炎はしばしば肝火旺(かんかおう)とも呼ばれます。 肝火上炎を放置していると悪影響が心(しん)や肺(はい)にも伝わり、心肝火旺(しんかんかおう)や肝火犯肺(かんかはんはい)の状態に陥ります。 心肝火旺の症状としては焦燥感、じっとしていられない、動悸、不眠症などが肝火上炎の状態に加わります。 心と肝は両方とも精神状態の安定化に貢献しているので、それらの失調は精神症状をより深刻なものにしてしまいます。 肝火犯肺の症状としては黄色くて粘り気のある痰をともなう咳が肝火上炎の状態に加わります。 肝の疏泄作用は肺の呼吸も手助けしているので、その失調により上記のような炎症性の呼吸器系症状を起こしてしまいます。 肝火上炎や心肝火旺を改善する漢方薬は竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)、黄連解毒湯(おうれんげどくとう)、三黄瀉心湯(さんのうしゃしんとう)などが代表的です。 肝火犯肺には神秘湯(しんぴとう)や柴朴湯(さいぼくとう)などがもちいられます。 熱極生風(ねつきょくせいふう)とは 熱極生風とは肝火上炎などを放置して熱性の症状がさらに悪化した状態を指します。 熱極生風の具体的な症状としては高熱、突然のけいれん、白目をむく、意識障害などが挙げられます。 熱極生風は西洋医学的には熱性けいれんに該当すると考えられます。 熱極生風を改善する漢方薬には黄連解毒湯(おうれんげどくとう)や杞菊地黄丸(こきくじおうがん)の併用、または牛黄(ごおう)製剤などがもちいられます。 しかしながら、現実的には西洋医学的治療を優先すべき状態といえます。 寒滞肝脈(かんたいかんみゃく)とは 寒滞肝脈(かんたいかんみゃく)とは肝の支配している気血の通り道である経絡(けいらく)に寒邪(かんじゃ)が侵入している状態を指します。 寒滞肝脈の具体的な症状としては胸や脇腹、側腹部、鼠蹊部や陰部(股の周辺部)に沿った痛みや冷え、男性の場合は陰嚢や睾丸の痛みなどが代表的です。 これらの痛みをともなう症状は寒邪(つまりは冷え)によって気や血の流れが止められてしまったことで起こります。 寒滞肝脈を改善する漢方薬は当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)や温経湯(うんけいとう)などが代表的です。 胆(たん)のはたらき 第2章で登場した五行論において肝は木に属し、六腑のうち胆と表裏の関係(臓が裏なので肝が裏)を築いています。 胆は飲食物の代謝を助けたり、肝と協調して精神活動を支えています。 このように基本的に胆は肝のサポート役といえます。 肝胆湿熱(かんたんしつねつ)とは 肝胆湿熱(かんたんしつねつ)とは身体内で生じた湿熱(しつねつ)が肝や胆が支配する経絡を伝って膀胱(ぼうこう)や経絡上に問題を起こす状態を指します。 肝胆湿熱の具体的な症状としては胸や脇腹、側腹部、鼠蹊部や陰部(股の周辺部)の湿疹や痛み、食欲不振、吐気や嘔吐、下痢や便秘、男性の場合は陰嚢の湿疹や睾丸の腫れ、女性の場合は色のついた臭いの強い帯下(おりもの)などが挙げられます。 肝胆湿熱を改善する漢方薬は竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)や茵陳蒿湯(いんちんこうとう)などが代表的です。 選択画面へ戻るにはへ 文・女性とこどもの漢方学術院(吉田健吾)• 心(しん)と小腸(しょうちょう)とは 心(しん)のはたらき 漢方(中医学)において「心」とは「こころ」ではなく「しん」と呼びます。 心の主なはたらきは2つあり、ひとつは血(けつ)を全身に力強く循環させるはたらきであり、もうひとつは高度な精神活動の維持です。 後者のはたらきは「こころ」を連想させられる点が興味深いです。 心はこの他にも舌のはたらき、つまりは味覚や発声にも関わっています。 心の異常 心において起こる代表的な異常として心気虚(しんききょ)、心陽虚(しんようきょ)、心血虚(しんけっきょ)、心陰虚(しんいんきょ)、心火上炎(しんかじょうえん)、心腎不交(しんじんふこう)、心血瘀阻(しんけつおそ)、痰迷心竅(たんめいしんきょう)、痰火擾心(たんかじょうしん)などが挙げられます。 心気虚(しんききょ)とは 心気虚とは心に供給される気が不足している状態を指します。 基本的に心のみが気虚に陥ることはなく、全身的な気虚の上で心の機能低下(この場合は主に循環器系の機能低下)が目立つ場合を指します。 心気虚の具体的な症状としては動悸、息切れ、不整脈、胸苦しさ、発汗過多などが挙げられます。 心気虚を改善する漢方薬は基本的に気虚に対応できるもの全般となります。 具体的には補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、四君子湯(しくんしとう)や六君子湯(りっくんしとう)、炙甘草湯(しゃかんぞうとう)などが代表的です。 心陽虚(しんようきょ)とは 心陽虚とは心気虚がより進行してしまうことで気の持つ温煦(おんく)作用、つまりは身体を温める作用が充分に発揮できなくなった状態を指します。 心陽虚の具体的な症状としては心気虚にくわえて手足の冷え、寒がり、薄い尿が頻繁に出るといった症状が現れます。 心陽虚を改善する漢方薬は人参湯(にんじんとう)、桂枝人参湯(けいしにんじんとう)、真武湯(しんぶとう)などが代表的です。 心血虚(しんけっきょ)とは 心血虚とは心を栄養する血が不足した状態です。 心気虚と同様に全身的な血虚症状の上で心の機能低下(この場合は精神活動の不調)が目立つ場合を指します。 心血虚の具体的な症状としては寝つきの悪さ、眠りの浅さ、多夢、不安感、記憶力の低下、驚きやすさなどが挙げられます。 心血虚はしばしば脾気虚(ひききょ)と併発しやすく、この状態を心脾両虚(しんぴりょうきょ)と呼びます。 脾気虚とは胃腸を中心とした消化機能が低下した状態であり、食事を通じて気や血が生み出されにくくなる状態です。 心脾両虚の具体的な症状としては心血虚の症状にくわえて食欲不振、空腹感の減少、食後の眠気や腹部の張り、下痢や軟便、疲労感などが挙げられます。 心血虚を改善する漢方薬は、酸棗仁湯(さんそうにんとう)、甘麦大棗湯(かんばくたいそうとう)などが代表的です。 心脾両虚の場合は帰脾湯(きひとう)や加味帰脾湯(かみきひとう)がより適しています。 心陰虚(しんいんきょ)とは 心陰虚とは心血虚にくわえて津液不足(しんえきぶそく)も併発している状態を指します。 血も津液(しんえき)も不足することで気の持つ熱性を抑制することができなくなっている状態ともいえます。 心陰虚の具体的な症状としては心血虚の症状にくわえてのぼせ感、手のひらや足の裏の不快な熱感、口の渇き、寝汗などが挙げられます。 心陰虚の改善には心血虚にもちいられる漢方薬に六味地黄丸(ろくみじおうがん)や杞菊地黄丸(こきくじおうがん)などが併用されます。 心火上炎(しんかじょうえん)とは 心火上炎とは主に激しい怒りや精神的なストレスが慢性的にかかり続けた結果として現れる病能です。 心火上炎の具体的な症状としてはイライラ感、焦燥感、多動、不眠症、のぼせ、顔面紅潮、口の渇き、口内炎などが挙げられます。 心火上炎は心火旺(しんかおう)や心火亢盛(しんかこうせい)とも呼ばれます。 多くの場合、肝(かん)も巻き込んだ心肝火旺(しんかんかおう)の状態となってみられます。 肝は心と強調して精神状態の安定化に貢献しているので、両者の失調はより強いイライラ感や怒りっぽさ、頭痛、めまい、耳鳴りや難聴などが現れやすくなります。 心火上炎や心肝火旺を改善する漢方薬は黄連解毒湯(おうれんげどくとう)、三黄瀉心湯(さんのうしゃしんとう)、加味逍遥散(かみしょうようさん)、大柴胡湯(だいさいことう)、竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)などが代表的です。 心腎不交(しんじんふこう)とは 心腎不交とは心火上炎などで生じた過剰な熱が腎(じん)の津液を消耗させてしまった状態を指します。 イメージとしては鍋の中に入っている水が強火を受けることで蒸発しているようなものです。 心腎不交の具体的な症状としては心火上炎の症状にくわえて下半身の重だるさ、手のひらや足の裏の不快なほてり感、寝汗、口の渇き、聴力低下や耳鳴りなどが挙げられます。 心腎不交を改善する漢方薬は六味地黄丸(ろくみじおうがん)と黄連解毒湯(おうれんげどくとう)の併用や知柏地黄丸(ちばくじおうがん)などが代表的です。 心血瘀阻(しんけつおそ)とは 心血瘀阻とは血の巡りの停滞である瘀血(おけつ)の症状が胸部を中心に現れた状態を指します。 心血瘀阻(しんけつおそ)の具体的な症状としては突然の強い胸部の痛み、締め付け感、動悸などが挙げられます。 西洋医学的には狭心症や心筋梗塞に該当する状態と考えられます。 心血瘀阻(しんけつおそ)を改善する漢方薬は桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、桃核承気湯(とうかくじょうきとう)、折衝飲(せっしょういん)、芎帰調血飲(きゅうきちょうけついん)などが代表的です。 漢方薬ではありませんが、血の巡りを改善する力に優れている田七人参(でんしちにんじん)をもちいた生薬製剤も有効です。 痰迷心竅(たんめいしんきょう)とは 痰迷心竅とは痰飲(たんいん)が心にこびりつくことで心の担っている精神安定化作用を妨害している状態です。 痰飲とは津液の流れが悪くなることで生まれる病的産物を指します。 痰迷心竅の具体的な症状としては異常な独り言、異常行動、手足のけいれん、意識障害、多量の痰がのどに詰まるなどが挙げられます。 西洋医学的には認知症や統合失調症の一部に該当すると考えられます。 痰迷心竅を改善する漢方薬は温胆湯(うんたんとう)や牛黄(ごおう)製剤などが代表的です。 痰火擾心(たんかじょうしん)とは 痰火擾心は上記の痰迷心竅と似た病態です。 痰火擾心もまた痰飲が心のはたらきを妨害しているのですが、この痰飲が慢性化などによって熱を帯びてしまっているのが痰火擾心です。 痰火擾心の具体的な症状としては精神状態や言語の錯乱、暴力行為や破壊行為、不眠、頭痛、発熱、のぼせ感、発熱、眼の充血、便秘、粘り気の強い黄色い痰がのどに詰まるなどが挙げられます。 全体的に痰迷心竅よりも攻撃的で激しい症状が多くなります。 痰火擾心を改善する漢方薬は黄連解毒湯(おうれんげどくとう)と温胆湯(うんたんとう)の併用や牛黄(ごおう)製剤などが代表的です。 小腸(しょうちょう)のはたらき 第2章で登場した五行論において心は火に属し、六腑のうち小腸と表裏の関係を築いています。 一方で心と小腸に深いつながりがあるとはいえません。 小腸のはたらきは胃から降りてきた飲食物から気や津液の原料となる有用成分(水穀の精微と呼ばれます)を吸収することであり、西洋医学的な小腸の考え方とほぼ同じといえます。 選択画面へ戻るにはへ 文・女性とこどもの漢方学術院(吉田健吾)• 脾(ひ)と胃(い)とは 脾(ひ)のはたらき 脾は漢方医学(中医学)において食べ物や飲み物を摂ることを通じて気・血(けつ)・津液(しんえき)を生みだす中心的な臓です。 いわば脾は人体における「工場」のような存在です。 より厳密には飲食物を消化吸収して気や津液のもとになる水穀の精微をつくり出すはたらきを担っています。 西洋医学的な表現をすれば脾は胃腸を含めた消化器系全般の機能を持った存在といえます。 脾でつくられた気や津液は心(しん)や肺に送られ、全身に広がってゆきます。 脾は他にも血が脈外に出ないように(出血しないように)しっかりと保持したり、口や手足、そして肌肉(きにく)の動きや機能を支えています。 肌肉とは肺と関わりが深い皮膚の最表面部の皮毛と、肝との関わりが深い筋肉の間に位置する部分を指します。 やや脱線しますが西洋医学的な「脾臓」には免疫機能や古くなった血液を破棄する役割があります。 したがって、漢方(中医学)で考えられている脾とは大きくはたらきが異なることになります。 脾の異常 脾において起こる代表的な異常として脾気虚(ひききょ)、脾陽虚(ひようきょ)、中気下陥(ちゅうきかかん)、脾不統血(ひふとうけつ)、脾肺気虚(ひはいききょ)、脾陰虚(ひいんきょ)、寒湿困脾(かんしつこんひ)、脾胃湿熱(ひいしつねつ)などが挙げられます。 脾は消化機能をつかさどっているので、大半のトラブルは胃腸に関連したものになります。 脾気虚(ひききょ)とは 脾気虚とは脾に供給される気が不足した状態を指します。 脾気虚の具体的な症状としては食欲不振、空腹感や味覚の低下、食後の眠気や腹部の張り、下痢や便秘といった便通障害、疲労感、手足の重だるさ、声を出すのがおっくう、体重や筋肉量の減少などが挙げられます。 これらの他にも脾気虚の方は甘いものを好む、野菜を嫌うといった特徴があります。 上記の通り、脾は気血を生み出す中心的な臓なので、その機能低下は結果的に全身的な気虚につながってしまいます。 脾気虚を改善する漢方薬は四君子湯(しくんしとう)や六君子湯(りっくんしとう)、五苓散(ごれいさん)、啓脾湯(けいひとう)、参苓白朮散(じんりょうびゃくじゅつさん)、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)などが挙げられます。 脾陽虚(ひようきょ)とは 脾陽虚は脾気虚よりも気の不足が深刻化した状態であり、気の身体を温める温煦(おんく)作用が低下した状態といえます。 脾陽虚の具体的な症状としては脾気虚の症状にくわえて腹部の冷え、腹痛(特に冷たいものを摂った後)、下痢、むくみ、透明な尿の頻尿などが挙げられます。 脾陽虚を改善する漢方薬は人参湯(にんじんとう)、桂枝人参湯(けいしにんじんとう)、附子人参湯(ぶしにんじんとう)、大建中湯(だいけんちゅうとう)、真武湯(しんぶとう)、などが代表的です。 中気下陥(ちゅうきかかん)とは 中気下陥とは気の不足によって主に臓腑を身体内のあるべき位置に固定できなくなった状態です。 これは気の持つ固摂(こせつ)作用が充分に発揮できなくなっているからです。 中気下陥の具体的な症状としては胃下垂、腎下垂(遊走腎)、子宮下垂(子宮脱)、脱肛といった内臓下垂が挙げられます。 その他にもふらつき、手足のだるさ、慢性的な下痢なども含まれます。 中気下陥の主な原因は脾における気の不足であるので、中気下陥は脾気虚における一側面と考えられます。 中気下陥を改善する漢方薬は基本的に脾気虚を改善する漢方薬となります。 その中でも補中益気湯(ほちゅうえっきとう)は固摂作用を回復させる力に秀でています。 脾不統血(ひふとうけつ)とは 脾不統血とは気の不足によって血(けつ)を身体内に保持する力が低下している状態を指します。 これは中気下陥と同様に脾における気の固摂作用が低下した結果と考えられます。 脾不統血の具体的な症状としては皮下出血、鼻血、血尿、血便、痔による出血、不正性器出血、経血過多などが挙げられます。 脾不統血を改善する漢方薬は気を補う補中益気湯(ほちゅうえっきとう)などと一緒に止血効果を持つ芎帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)の併用が適しています。 脾肺気虚(ひはいききょ)とは 脾肺気虚とは脾だけではなく肺における気虚がともに進行した状態を指します。 脾と肺は五行論(ごぎょうろん)における母子関係(脾が母で肺が子)にあり、脾気虚を発端に肺気虚が進行しやすいといわれています。 脾肺気虚の具体的な症状としては脾気虚の症状にくわえて息切れ、呼吸のしにくさ、水っぽい痰をともなう咳、かぜを引きやすい、発汗過多などが挙げられます。 脾肺気虚を改善する漢方薬は参蘇飲(じんそいん)、他には気を補う補中益気湯(ほちゅうえっきとう)や六君子湯(りっくんしとう)と一緒に咳を鎮める五虎湯(ごことう)や麦門冬湯(ばくもんどうとう)などとの併用が考えられます。 脾陰虚(ひいんきょ)とは 脾陰虚とは脾において津液不足(しんえきぶそく)が起こっている状態を指します。 脾陰虚の具体的な症状としては口の渇き、唇の乾燥、手足のほてり、微熱、食欲不振、空腹感の低下、腹部の張り感などが挙げられます。 脾陰虚に陥るとしばしば舌の苔(こけ)が地図状に現れるという特徴があります。 基本的に脾陰虚は独立して現れることはなく、脾気虚などと一緒にみられます。 脾陰虚を改善する漢方薬は啓脾湯(けいひとう)、参苓白朮散(じんりょうびゃくじゅつさん)などが代表的です。 寒湿困脾(かんしつこんひ)とは 寒湿困脾とは寒性を帯びている水湿(すいしつ)が脾胃に停滞した状態を指します。 水湿とは津液(しんえき)の流れが悪くなったことで生じる病的産物であり、寒湿とは脾胃に生じた「冷たいヘドロ」のようなイメージです。 寒湿困脾の具体的な症状としては食欲不振、吐気や嘔吐、口の粘り、胃腸の張り感、腹痛、軟便や下痢(便の臭いは弱い)、身体の重だるさ、頭重感、むくみ、日中の眠気などが挙げられます。 寒湿困脾を改善する漢方薬は胃苓湯(いれいとう)、五苓散(ごれいさん)、藿香正気散(かっこうしょうきさん)、茯苓飲(ぶくりょういん)などが代表的です。 脾胃湿熱(ひいしつねつ)とは 脾胃湿熱とは熱性を帯びている水湿である湿熱が脾胃に停滞した状態を指します。 寒湿困脾と脾胃湿熱は水湿が脾胃に悪影響を及ぼしている点では共通しています。 上記の表現を借りれば脾胃湿熱は消化器に「熱っぽいヘドロ」のようなものがたまっている状態といえます。 脾胃湿熱の具体的な症状としては食欲不振、吐気や嘔吐、口の粘り、口の渇き、軟便や下痢(便の臭が強くベトベトしている)、色の濃い尿、肌のかゆみや黄色化ななどが挙げられます。 脾胃湿熱は脂っこいものやアルコール類を摂り過ぎた後、つまり二日酔いやそのような生活を繰り返していると陥りやすい病態でもあります。 脾胃湿熱を改善する漢方薬は茵蔯蒿湯(いんちんこうとう)、茵蔯五苓散(いんちんごれいさん)、平胃散合黄連解毒湯(へいいさんごうおうれんげどくとう)、黄連解毒湯合五苓散(おうれんげどくとうごうごれいさん)などが代表的です。 胃(い)のはたらき 脾は五行論において土に属し、六腑のうち胃と表裏の関係を築いています。 胃は飲食物の消化をおこない、脾が水穀の精微をつくり出しやすいようにサポートしています。 このように胃と脾は機能面において強く結びついている臓腑といえます。 胃の異常 胃において起こる代表的な異常として胃気虚(いききょ)、胃陽虚(いようきょ)、胃陰虚(いいんきょ)、胃寒(いかん)、胃熱(いねつ)、食滞胃脘(しょくたいいかん)などが挙げられます。 胃のトラブルは比較的、上腹部に現れやすいという特徴があります。 現実的には脾と胃の関連性はとても高いので脾のトラブルと胃のトラブルを厳密に切り分けるのは難しいです。 胃気虚(いききょ)とは 胃気虚とは胃に供給される気が不足した状態であり、主に消化機能が低下した状態ともいえます。 胃気虚の具体的な症状としては吐気と嘔吐、少し食べただけで胃が張る、食の細さなどが挙げられます。 胃気虚を改善する漢方薬は小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりょうとう)、六君子湯(りっくんしとう)などが代表的です。 小半夏加茯苓湯は妊娠中の「つわりの漢方薬」として有名ですが、吐気を中心につわりにこだわることなく使用できます。 胃陽虚(いようきょ)とは 胃陽虚とは胃気虚よりもさらに気の不足が進行した状態であり、気の温煦作用の低下が目立つ状態といえます。 しばしば胃気虚と胃陽虚をあわせて胃気不足(いきぶそく)とも表現されます。 胃陽虚の具体的な症状としては胃気虚の状態にくわえて、手足の冷え、寒がり、冷やすことによって悪化する胃痛などが挙げられます。 胃陽虚を改善する漢方薬としては人参湯(にんじんとう)、呉茱萸湯(ごしゅゆとう)が代表的です。 呉茱萸湯は胃陽虚による胃痛だけではなく、寒冷刺激によって現れたり悪化したりする頭痛にも有効な漢方薬です。 胃陰虚(いいんきょ)とは 胃陰虚とは胃を潤すための津液が不足している状態を指します。 胃陰虚の具体的な症状としては食欲低下、口の渇き、からえずき、しゃっくり、胃痛、胸やけ、腹部の張り感、便秘などが挙げられます。 胃陰虚においては、空腹感はある一方で食べる気が起こらない、吐気はあるけれど嘔吐することないという特徴があります。 胃陰虚を改善する漢方薬は麦門冬湯(ばくもんどうとう)が代表的です。 麦門冬湯は主に肺陰虚(はいいんきょ)にもちいられる漢方薬なので、胃陰虚にくわえて肺陰虚による乾燥した咳や切りにくい痰もある場合には最適です。 胃寒(いかん)とは 胃寒(いかん)とは主に生ものや冷たいものを摂り過ぎたことによって胃が冷え、そのはたらきが低下した状態を指します。 胃寒は胃陽虚と似た病態ですが、胃陽虚は温める力の低下である一方、胃寒は食事や外気などによって冷やされてしまった結果です。 しかしながら、現実的には胃寒は胃陽虚や脾陽虚をともなっていることが多いです。 胃寒の具体的な症状としては冷えによって悪くなる胃痛、水っぽい大量の唾液、吐気と嘔吐などが挙げられます。 胃寒を改善する漢方薬としては人参湯(にんじんとう)や附子人参湯(ぶしにんじんとう)など主に脾陽虚の改善にもちいられる漢方薬が使用されます。 胃熱(いねつ)とは 胃熱とは辛い物やアルコール類の摂り過ぎなどによって胃に熱がこもり、そのはたらきが低下した状態を指します。 胃熱の具体的な症状としては過食、吐気や嘔吐、ゲップ、口の渇き、口臭、歯肉の腫れや化膿、胸やけ、胃痛、便秘などが挙げられます。 胃熱を改善する漢方薬としては黄連解毒湯(おうれんげどくとう)、半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)、吐気やゲップが目立つ場合は生姜瀉心湯(しょうきょうしゃしんとう)、口の渇きが強いケースは白虎湯(びゃっことう)などが代表的です。 食滞胃脘(しょくたいいかん)とは 食滞胃脘(しょくたいいかん)とは暴飲暴食や食べ過ぎなどによって食べたものが胃に停滞し、胃のはたらきが悪くなっている状態を指します。 脾胃が弱っている方だと普通の量の食事でも食滞胃脘に陥ることもあります。 食滞胃脘の具体的な症状としてはゲップ、吐気や嘔吐、料理のにおいを嗅ぎたくない、胃や腹部の張り感、消化不良の下痢、便秘などが挙げられます。 食滞胃脘を改善する漢方薬としては消化不良の下痢がある場合は参苓白朮散(じんりょうびゃくじゅつさん)や啓脾湯(けいひとう)、胃の痛みや腹痛にくわえて下痢が目立つなら半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)、もともと消化器が弱い方は六君子湯(りっくんしとう)が適しています。 選択画面へ戻るにはへ 文・女性とこどもの漢方学術院(吉田健吾)• 肺(はい)と大腸(だいちょう)とは 肺(はい)のはたらき 肺は漢方医学(中医学)において呼吸をおこなったり、気と津液(しんえき)の巡りに深く関与しています。 肺は大気から気の一部となる清気(せいき)を取り入れ、不要となった気である濁気を吐き出します。 この点は西洋医学における酸素の取入れと二酸化炭素の排出に考えは似ています。 他にも肺は脾(ひ)から受け取った気や津液をシャワーのように全身に散布してゆきます。 このはたらきを宣発(せんぱつ)と呼びます。 肺の宣発作用によって散布された津液は身体内で代謝され腎(じん)や膀胱(ぼうこう)へと下降し、尿として排出されます。 このような下降性の流れを粛降(しゅくこう)と呼び、やはり肺がコントロールしています。 宣発によって体表に散布された気は病邪を跳ね返す「バリア」としても機能します。 この役割を担っている気は衛気(えき)と呼ばれ、バリア機能以外にも身体を温めたり、身体の最表面部にある皮毛や汗腺にはたらきかけて発汗を調節したりもします。 肺の異常 肺において起こる代表的な異常として肺気虚(はいききょ)、肺陽虚(はいようきょ)、肺腎気虚(はいじんききょ)、肺陰虚(はいいんきょ)、肺腎陰虚(はいじんいんきょ)、風寒犯肺(ふうかんはんはい)、風熱犯肺(ふうねつはんはい)、痰熱壅肺(たんねつようはい)、痰湿阻肺(たんしつそはい)、燥邪犯肺(そうじゃはんはい)などが挙げられます。 風寒犯肺以下の状態は何らかの病邪(たとえば風寒犯肺なら風寒邪(ふうかんじゃ)に侵されている)の悪影響を受けた状態であり、これらをまとめて肺失宣降(はいしつせんこう)と呼びます。 肺は呼吸を通じて外界と緊密に接しています。 したがって、冷えや乾燥といった環境の悪影響、つまりは病邪の悪影響を最も受けやすい臓といえます。 しばしば肺失宣降は肺失宣粛(はいしつせんしゅく)とも呼ばれることがありますが意味は同じです。 肺気虚(はいききょ)とは 肺気虚とは肺に供給される気が不足した状態を指します。 肺気虚(はいききょ)の具体的な症状としては咳、水っぽい痰、息切れ、声に力が入らない、疲労感、汗をかきやすい、かぜなどの感染症にかかりやすいなどが挙げられます。 発汗過多や免疫力の低下はそれらをコントロールしている衛気(えき)が減少することで起こります。 衛気が不足すると病邪に対する抵抗力が低下し、容易に肺失宣降に陥ってしまいます。 肺気虚を改善する漢方薬は玉屏風散(ぎょくびょうぶさん)、参蘇飲(じんそいん)、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)などが代表的です。 補中益気湯は消化器の不調を改善する力に優れているので脾(ひ)における気も不足している脾肺気虚(ひはいききょ)により適しています。 肺陽虚(はいようきょ)とは 肺陽虚(はいようきょ)とは気の不足が進行し、身体を温める気の温煦(おんく)作用が低下した状態を指します。 肺陽虚の具体的な症状としては肺気虚の症状に手足の冷え、むくみ、薄い尿が多く出るといった症状が加わります。 肺陽虚を改善する漢方薬は人参湯(にんじんとう)と苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう)の併用などが考えられます。 肺腎気虚(じんききょ)とは 肺腎気虚(じんききょ)とは肺と腎(じん)における気が不足した状態であり、腎不納気(じんふのうき)とも呼ばれます。 上記の「肺のはたらき」でも述べている通り、 肺は呼吸をつかさどっている臓です。 その中でも特に空気を吐き出す呼気を担っています。 一方で腎は空気を吸い込む吸気に関わっています。 呼吸に深く関わっている肺腎の不調は大気中の気の取り込みに大きな支障となってしまいます。 肺腎気虚の具体的な症状としては吸気性呼吸困難、息切れ、発声困難、手足の冷え、むくみ、発汗過多、顔色の白さ、腰の痛みや重だるさなどが挙げられます。 腎不納気の特徴は吸気性呼吸困難、つまりは息が深く吸えない、息が浅くなってしまう点といえます。 肺腎気虚を改善する漢方薬は補中益気湯(ほちゅうえっきとう)または人参湯(にんじんとう)と八味地黄丸(はちみじおうがん)の併用などが考えられます。 肺陰虚(はいいんきょ)とは 肺陰虚(はいいんきょ)とは肺に供給される血(けつ)や津液(しんえき)が不足した状態を指します。 血と津液には気の持つ熱性を抑制したり身体に潤いをあたえるはたらきがあるので、それらが不足した肺陰虚の病態では熱っぽく乾燥した症状がみられます。 肺陰虚の具体的な症状としては空咳、粘りのある痰、しわがれ声による発声困難、喉や口の乾燥、手足のほてり感、寝汗などが挙げられます。 肺陰虚を改善する漢方薬は麦門冬湯(ばくもんどうとう)が代表的です。 麦門冬湯(ばくもんどうとう)は胃陰虚(いいんきょ)にも対応できる漢方薬なので、それによる食欲低下、上腹部の不快感、からえずき、しゃっくりなどの症状がある場合はより適しているといえます。 肺腎陰虚(じんいんきょ)とは 肺腎陰虚とは肺と腎に供給される血と津液が不足した状態といえます。 症状も肺陰虚と腎陰虚が合わさったものとなります。 具体的な肺腎陰虚の症状は肺陰虚にくわえて腰や膝の脱力感、のぼせ感、寝汗、寝つきの悪さ、濃い尿が出る、体重減少、肌の乾燥といったものが挙げられます。 肺腎陰虚を改善する漢方薬は味麦地黄丸(みばくじおうがん)、滋陰降火湯(じいんこうかとう)、麦門冬湯(ばくもんどうとう)と六味地黄丸(ろくみじおうがん)の併用などが考えられます。 しばしば味麦地黄丸(みばくじおうがん)は麦味地黄丸(ばくみじおうがん)とも表記されますが、これらは同様の漢方薬です。 風寒犯肺(ふうかんはんはい)とは 風寒犯肺とは風寒邪(ふうかんじゃ)が肺に侵入した状態を指します。 風寒邪とは簡単に表現すれば冬場における外気の冷えや夏場のクーラーによる身体の冷やし過ぎといった環境要因といえます。 風寒犯肺の具体的な症状としては咳、水っぽい鼻水や痰、鼻づまり、クシャミ、悪寒、頭痛、関節痛などが挙げられます。 風寒犯肺によってもたらされる症状の多くはかぜの引きはじめやアレルギー性鼻炎などでしばしばみられます。 風寒犯肺を改善する漢方薬は小青竜湯(しょうせいりゅうとう)、麻黄湯(まおうとう)、葛根湯(かっこんとう)などが代表的です。 風熱犯肺(ふうねつはんはい)とは 風熱犯肺とは風熱邪(ふうねつじゃ)が肺に侵入した状態を指します。 風熱邪のイメージとしては夏場の暑さや暖房などの環境要因であり、それらによってもたらされる(悪化する)呼吸器の炎症を中心とした症状が風熱犯肺といえます。 風熱犯肺の具体的な症状としては喉の痛みをともなう咳、黄色い粘つきのある痰や鼻汁、鼻閉、頭痛、口の渇き、身体の熱感などが挙げられます。 風熱犯肺を改善する漢方薬は麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)、五虎湯(ごことう)、頭痛や発熱が目立つ場合はこれらと銀翹散(ぎんぎょうさん)や駆風解毒湯(くふうげどくとう)の併用などが考えられます。 痰熱壅肺(たんねつようはい)とは 痰熱壅肺とは熱を帯びた痰飲(たんいん)が肺にふさがり、そのはたらきを悪くしている状態を指します。 「壅(よう)」という難しい字には「ふさぐ」という意味があります。 痰飲とは巡りが悪くなった津液(しんえき)を由来とする病的産物です。 痰飲とほぼ同じ意味に水湿(すいしつ)が存在しますが、痰飲は水湿よりも流動性が低いものといわれています。 しかしながら、両者を明確に区別することは難しいです。 痰熱壅肺の具体的な症状としては粘つきのある痰をともなう咳、ときに痰には血が混じる、呼吸困難、口の渇き、胸痛、発熱、精神不安、濃い尿が出る、便秘などが挙げられます。 痰熱壅肺の症状は重い肺炎や肺に膿がたまる肺膿瘍(はいのうよう)の症状と重なる部分が多いです。 痰熱壅肺を改善する漢方薬は清肺湯(せいはいとう)、柴陥湯(さいかんとう)、辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)などが代表的です。 痰湿阻肺(たんしつそはい)とは 痰湿阻肺(たんしつそはい)とは上記の痰熱壅肺でも登場した痰飲が肺にたまり、そのはたらきを悪くしている状態を指します。 痰湿阻肺の具体的な症状としては白色で粘り気のある痰をともなう咳、痰が喉に絡む、胸苦しさ、胃腸の不調などが挙げられます。 痰湿阻肺の特徴として食欲不振や吐気といった消化器系の症状をしばしばともないます。 痰湿阻肺を改善する漢方薬は二陳湯(にちんとう)、苓甘姜味辛夏仁湯(りょうかんきょうみしんげにんとう)、消化器の不調が目立つ場合は六君子湯(りっくんしとう)などが考えられます。 燥邪犯肺(そうじゃはんはい)とは 燥邪犯肺とは燥邪(そうじゃ)の悪影響により、肺の機能が低下した状態を指します。 燥邪とは主に外気の乾燥のことであり、秋季にしばしば見舞われます。 燥邪犯肺による具体的な症状としては乾いた咳、粘り気のある痰、喉の痛み、喉・唇・鼻・肌の乾燥、悪寒や発熱、頭痛などが挙げられます。 燥邪犯肺を改善する漢方薬は麦門冬湯(ばくもんどうとう)や滋陰降火湯(じいんこうかとう)などが挙げられます。 大腸(だいちょう)のはたらき 肺は五行論において金に属し、六腑のうち大腸と表裏の関係を築いています。 大腸は便の排泄に関係しており、この点は西洋医学的な大腸の考え方と同様です。 大腸の異常 大腸において起こる代表的な異常として大腸湿熱(だいちょうしつねつ)、大腸虚寒(だいちょうきょかん)、実熱燥結(じつねつそうけつ)、陰虚燥結(いんきょそうけつ)などが挙げられます。 大腸におけるトラブルはほぼ便通の異常といえます。 大腸湿熱(だいちょうしつねつ)とは 大腸湿熱とは熱を帯びた水湿が大腸に侵入している状態を指します。 西洋医学的には細菌感染による腸炎などが大腸湿熱に該当します。 大腸湿熱の具体的な症状としては下腹部の痛みをともなう下痢、急に現れる便意、肛門の熱感、腫れの目立つ痔、痔出血、便に膿・粘液・血液が混じる、発熱、口の苦みなどが挙げられます。 大腸湿熱を改善する漢方薬は葛根黄連黄芩湯(かっこんおうれんおうごんとう)、黄芩湯(おうごんとう)、黄連解毒湯(おうれんげどくとう)などが代表的です。 大腸虚寒(だいちょうきょかん)とは 大腸虚寒とは大腸における気が不足し、気の持つ固摂(こせつ)作用や温煦作用が発揮できなくなっている状態です。 固摂作用とは気や血といった身体に必要なものをしっかりとキープするはたらきですが、これには便も含まれます。 固摂作用が低下すると腸に便が保持できなくなってしまいます。 大腸虚寒の具体的な症状としては慢性的な下痢、大便失禁、排便後の脱肛、冷えによって悪化するシクシクとした腹痛、寒がりなどが挙げられます。 大腸虚寒を改善する漢方薬は真武湯(しんぶとう)、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、大建中湯(だいけんちゅうとう)などが代表的です。 実熱燥結(じつねつそうけつ)とは 実熱燥結とは身体内に熱邪(ねつじゃ)が津液を消耗してしまった状態を指します。 この場合の熱邪とは発熱や消化器における炎症を引き起こす存在といえます。 実熱燥結の具体的な症状としては便秘、腹部の張り感、腹痛、吐気や嘔吐、口の渇き、口の苦み、ほてり感などが挙げられます。 実熱燥結を改善する漢方薬は桃核承気湯(とうかくじょうきとう)や調胃承気湯(ちょういじょうきとう)といった承気湯類、大黄牡丹皮湯(だいおうぼたんぴとう)などが代表的です。 陰虚燥結(いんきょそうけつ)とは 陰虚燥結とは大腸における津液が不足した状態を指します。 上記の実熱燥結と結果は似ていますが、熱邪によるほてり感といった熱性症状はありません。 陰虚燥結は老人性の便秘、産後や慢性病を患った方にしばしばみられます。 陰虚燥結の具体的な症状としてはコロコロとした便が多い便秘、皮膚の乾燥などが挙げられます。 陰虚燥結を改善する漢方薬は潤腸湯(じゅんちょうとう)、麻子仁丸(ましにんがん)などが代表的です。 選択画面へ戻るにはへ 文・女性とこどもの漢方学術院(吉田健吾)• 腎(じん)と膀胱(ぼうこう)とは 腎(じん)のはたらき 腎は漢方医学(中医学)において生命エネルギーの結晶とも呼べる精(せい)を蓄えたり、膀胱(ぼうこう)と協力して排尿などの水分代謝を担っています。 しばしば腎のはたらきは精のはたらきと同一視されます。 精とは生殖活動、成長や発達、骨・髓・脳の形成などに必要な物質です。 他にも精は気や血(けつ)に生まれ変わることもできます(精についてのくわしい解説はをご覧ください)。 水分代謝に関しては身体内で代謝を受けた不要な水分は腎と膀胱を介して尿となり排泄されます。 一方でまだ利用ができる水分、つまり津液(しんえき)は腎の力で再び身体内を巡ってゆきます。 このはたらきを蒸騰気化(じょうとうきか)と呼びます。 したがって、水分代謝には五臓において脾(ひ)と肺(はい)、そして腎が深く関わっていることになります。 水分代謝ではありませんが、呼吸の面で腎は吸気、肺は呼気をコントロールしています。 その他に腎は耳と髪、そして二陰のはたらきも底支えしています。 二陰とは尿道と肛門を指した言葉ですが排泄全般と考えてよいでしょう。 腎が充実していれば聴覚は保たれ、髪は抜け毛や白髪が少なく、排尿や排便もスムーズに行われます。 腎の異常 腎において起こる代表的な異常としては腎虚(じんきょ)、腎陽虚(じんようきょ)、腎陰虚(じんいんきょ)、腎気不固(じんきふこ)、腎虚水氾(じんきょすいはん)などが挙げられます。 腎虚(じんきょ)とは 腎虚とは腎に蓄えられている精(しばしば腎精と呼ばれます)が不足した状態を指します。 より厳密には精が不足した状態自体を腎精不足(じんせいぶそく)、腎精不足(じんせいぶそく)によって生じてしまった機能面の低下を腎気虚(じんききょ)と表現します。 しかしながら、腎精不足と腎気虚は不可分なものであり、多くの場合は両者をまとめて腎虚とします。 腎虚の具体的な症状として、乳幼児期においては「起立の遅れ」「歩行の遅れ」「言葉の遅れ」「発毛の遅れ」「歯の生え揃えの遅れ」という五遅(ごち)に代表されます。 その他にも泉門の閉鎖の遅れ、夜尿症、骨や筋肉の形成不全なども腎虚に含まれます。 成人以降の主な腎虚の症状としては疲れやすさ、腰痛や腰の重だるさ、頻尿や夜間尿、記憶力の低下、視覚や聴覚の低下、精力・性欲の低下(男性の場合はED)、白髪や抜け毛の増加、女性の場合は早期の閉経や不妊症などが挙げられます。 精は生殖活動もつかさどっているので若年層の男女における原因不明の不妊症には腎虚が根底にあると考えられます。 腎虚を改善する漢方薬は乳幼児期の場合は六味地黄丸(ろくみじおうがん)、成人の場合は八味地黄丸(はちみじおうがん)や牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)などが代表的です。 腎陽虚(じんようきょ)とは 腎陽虚とは腎における気の力が低下し、温煦(おんく)作用が充分に発揮できなくなった状態を指します。 この温煦作用とは気の持つ機能のうちで身体を温めるはたらきを指します。 腎陽虚の具体的な症状としては腎気虚の症状にくわえて足腰の冷え、薄い尿が多く出る、軟便、顔の青白さなどが現れます。 腎陽虚からしばしば腎だけではなく脾における気の不足である脾腎陽虚(ひじんようきょ)の病態に進行することがあります。 脾(ひ)は飲食物から気などを生み出す中心的な臓です。 脾からつくられた気の一部は精となって腎精を補充します。 一方で腎精から生まれた気は脾のはたらきを後押ししてさらなる気の生成を促します。 このように両者は相互依存関係が強い臓なので、どちらの不調も結果的には腎と脾における気の不足、つまり脾腎陽虚に陥ります。 腎陽虚を改善する漢方薬は八味地黄丸(はちみじおうがん)、牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)、これらの他に鹿の角である鹿茸(ろくじょう)を含んだ生薬製剤などが代表的です。 脾腎陽虚による食欲不振や腹痛なども目立つようなら腎陽虚に対応する漢方薬にくわえて真武湯(しんぶとう)や附子人参湯(ぶしにんじんとう)の併用が考えられます。 腎陰虚(じんいんきょ)とは 腎陰虚とは腎における血(けつ)や津液(しんえき)が不足した状態を指します。 腎陰虚の具体的な症状としては腎気虚による症状にくわえて手足のほてり、口の渇き、寝汗、性欲の仮性亢進(男性の場合は勃起はするが射精できない、快感が得られない)などが挙げられます。 腎陰虚は肝(かん)における陰虚も併発する肝腎陰虚(かんじんいんきょ)に移行しやすいことが知られています。 この理由として腎は血に生まれ変わることのできる精を蓄え、肝は血を蓄えています。 このように両者は血を通じて結びつきが強い臓であり、そのために肝腎同源(かんじんどうげん)とも呼ばれるほどです。 腎陰虚を改善する漢方薬は知柏地黄丸(ちばくじおうがん)、杞菊地黄丸(こきくじおうがん)、肝腎陰虚による眼の乾燥感や筋肉のひきつりなどが起こる場合は腎陰虚を改善する漢方薬に四物湯(しもつとう)の併用などが考えられます。 腎気不固(じんきふこ)とは 腎気不固とは腎における気の不足によって、気の固摂(こせつ)作用が充分に発揮できない状態を指します。 固摂作用とは身体とって必要なものや一時的に蓄える必要があるものをしっかりと保持するはたらきです。 腎気不固の具体的な症状としては頻尿、尿失禁、頻回の便通、便失禁、発汗過多、遺精(精子の漏れ出し)、早産や流産などが挙げられます。 腎気不固を改善する漢方薬は六味地黄丸(ろくみじおうがん)や八味地黄丸(はちみじおうがん)と一緒に桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)との併用などが代表的です。 桂枝加竜骨牡蛎湯には不安感や疲労感を改善する力もあるので、腎気不固にくわえてそのような症状もあるようなら最適といえます。 腎虚水氾(じんきょすいはん)とは 腎虚水氾とは腎における気化(きか)作用が衰えている状態を指します。 このケースの気化作用とは余分な水分を尿として排泄することを指します。 腎虚水氾の具体的な症状としては下半身を中心とした全身のむくみ、尿量の減少、排尿困難などが挙げられます。 しばしば腎虚水氾は腎虚水泛(この読みも「じんきょすいはん」です)とも表現されますが両者の意味は同じです。 なお「氾」と「泛」の文字にはそれぞれ「水がひろがる」「水があふれる」という意味があります。 腎虚水氾を改善する漢方薬は腎虚を改善する漢方薬に五苓散(ごれいさん)、猪苓湯(ちょれいとう)、真武湯(しんぶとう)などの併用が考えられます。 膀胱(ぼうこう)のはたらき 腎は五行論において水に属し、六腑のうち膀胱と表裏の関係を築いています。 膀胱のはたらきは腎と協力しながら蓄尿と排尿をおこなうことです。 この点から漢方医学(中医学)における膀胱の概念と西洋医学的な膀胱の機能はほぼ同じと考えてよいでしょう。 膀胱の異常 膀胱において起こる異常は膀胱湿熱(ぼうこうしつねつ)のみと考えて差し支えありません。 この理由として膀胱の担っている役割の大部分が腎と重複しており、膀胱が関係する異常も腎の異常とみなされることが多いからです。 したがって、独立した膀胱の異常となると膀胱湿熱くらいしか残らないことになります。 膀胱湿熱(ぼうこうしつねつ)とは 膀胱湿熱とは膀胱に熱を帯びた水湿(すいしつ)が侵入している状態を指します。 水湿とは津液がスムーズに流れなかったことで生まれる病的産物です。 膀胱湿熱の具体的な症状としては排尿時の痛み、急に現れる尿意、頻尿、残尿感、尿が濃い黄色に濁る、血尿、下腹部の違和感、腰痛、発熱などが挙げられます。 膀胱湿熱における多くの症状は膀胱炎や尿路結石でみられるものです。 膀胱湿熱を改善する漢方薬は猪苓湯(ちょれいとう)、五淋散(ごりんさん)、竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)などが代表的です。 選択画面へ戻るにはへ 文・女性とこどもの漢方学術院(吉田健吾)• 寄恒の腑(きこうのふ)とは 寄恒の腑の性質 寄恒の腑とは骨(こつ)・髓(ずい)・脳(のう)・脈(みゃく)・胆(たん)・女子胞(じょしほう)のことを指します。 「奇恒」とは「普通とは異なる」という意味であり、これらは腑でありながら臓に似た性質を持っています。 そもそも臓とは気などを生み出したりためこむ存在です。 一方の腑は飲食物を消化・吸収・排泄するための器官であり、中空の袋状の器官です。 寄恒の腑はこのような腑の「常識」から外れた存在といえます。 寄恒の腑は五臓六腑と比較してあまり着目されることのない存在なので、入門書ではしばしば省略されてしまうこともあります。 本ページでは簡単に寄恒の腑それぞれのはたらきを解説してゆきます。 くわえて、最後に寄恒の腑ではありませんが心包(しいんぽう)について補足します。 骨・髓・脳について 骨・髓・脳はそれぞれ腎(じん)に蓄えられている精(せい)から生まれます。 骨は西洋医学的な骨の概念と同様で、身体を支える役割を担っています。 髓は骨のなかに含まれており、骨のはたらきを支えています。 脳は精神活動、身体の運動、視聴覚などを担っています。 一方で漢方医学(中医学)においてそれらの機能には心(しん)、肝(かん)、腎も深く関係しています。 脈について 脈は血(けつ)が通る道であり西洋医学的な血管とほぼ同じです。 血は心から押し出され、脈のなかを気の力を借りて巡ってゆきます。 その他にも肝(かん)の疏泄(そせつ)作用によって血の循環はコントロールされ、脾(ひ)の統血(とうけつ)作用によって脈から血が漏れ出さないようになっています。 脈はしばしば血脈(けつみゃく)や血府(けっぷ)とも呼ばれます。 胆とは 胆は他の寄恒の腑と異なり五臓六腑(ごぞうろっぷ)のなかの一翼を担っている腑です。 具体的には肝と表裏の関係(肝が裏で胆が表)を築いています。 胆は飲食物の代謝を助けたり、肝と協調して精神活動を支えています。 このように基本的に胆は肝のサポート役といえます。 女子胞とは 女子胞とは月経・妊娠・出産をつかさどる器官であり、西洋医学的な子宮や卵巣を総合したような存在といえます。 女子胞は精や血によって栄養され、精から生まれた天癸(てんき)という物質の作用により月経が開始されます。 つまり、妊娠が可能となるのです。 天癸は腎の精が充実するとつくられ、年齢とともに減少しやがて閉経に至ります。 いわば天癸は性ホルモンといえるでしょう。 女子胞はしばしば胞宮(ほうきゅう)や血室(けつしつ)とも呼ばれます。 心包とは 心包とは心の外側を包んでいる膜であり、心を保護するバリアのような存在です。 くわえて心包は心の担っている精神活動なども補佐しています。 基本的に心包のみの独立した病的状態は存在せず、あくまで心の問題の一部と解釈されます。 選択画面へ戻るにはへ 文・女性とこどもの漢方学術院(吉田健吾)•

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