中国 アメリカ 対立。 東・南シナ海、対立の構図 6つのポイントで解読:日本経済新聞

米中貿易戦争の本当の理由 ~資本主義と共産主義の必然~

中国 アメリカ 対立

習主席が、かつて中国共産党がおよそ1万2,000キロを徒歩で行軍したという故事、「長征」になぞらえて演説を行ったと報じられるなど、長期戦に臨む構えも見せています。 我々は国内外の対抗勢力を討ち、勝利を勝ち取らなければならない』と習主席が述べた。 」 一方、米中の対立は双方の経済に、悪影響を及ぼし始めています。 アメリカでは、中国への大豆の輸出が減少するなど、農家への悪影響が顕著に。 中国でも、企業が生産拠点を東南アジアなどに移す動きもみられ、雇用への影響が出ています。 そして影響は世界経済にも。 IMF(国際通貨基金)は、米中の貿易摩擦がさらに激しくなれば、来年(2020年)の世界全体のGDPが0.5%押し下げられるとする試算を明らかにしています。 IMF ラガルド専務理事 「世界経済の成長が0.5%減少すると、すべての国が影響を受ける。 貿易摩擦解消のため(G20は)何を改善できるか、決定が下せるか、真剣に検討しなければならない。 」 有馬 「ここからは、中国総局の関総局長、ワシントン支局の油井支局長と話を進めていきます。 まず油井さんに伺います。 米中の貿易摩擦が長引いていますが、トランプ大統領としてはそろそろ具体的な成果が欲しいところですよね?」 油井秀樹支局長(ワシントン支局) 「その通りです。 何と言っても、アメリカでは来年の大統領選挙に向けた動きが本格化しています。 これに向けてトランプ大統領は、成果をあげて国民にアピールしたいというのが本音です。 」 有馬 「今回、トランプ大統領はどんな成果を具体的に目指しているのでしょうか?」 油井支局長 「米中貿易交渉でトランプ政権が求めているのは、中国に確実に約束を守らせる絶対的な保証です。 具体的には、『中国の法改正』です。 」 有馬 「アメリカが『中国の法改正』を望む。 どういうことなんでしょうか?」 油井支局長 「アメリカが要求しているのは、『アメリカの技術を盗むな』、つまり知的財産権の侵害をやめ、アメリカ企業に技術の移転を強要するのはやめろ、ということです。 しかしアメリカには、これまで何度も約束しては破られてきたという、極めて強い不信感があります。 だからこそ今回はこの『中国の法改正』まで求めて、将来にわたる保証を得ようとしているのです。 」 有馬 「関さん、これは中国からしてみると、内政干渉にも思えますよね。 習主席は、簡単には応じられないのではないでしょうか?」 関則夫総局長(中国総局長) 「これは中国の主権に関わる問題です。 ですので、この法改正の要求をそのまま、アメリカとの合意文書に盛り込むことは絶対に出来ないと思います。 実は中国はすでに、企業への技術移転の強要を禁止するなど、ある程度の法改正は進めてきました。 習主席としては、国内の対米強硬派の声を抑えつつ、なんとか穏便にまとめようとしてきたわけです。 ところがトランプ大統領は合意に一歩近づくと、『後出しじゃんけん』のように新たな要求を突きつけてきたと、中国はそう感じております。 そうした間に、中国では影響が広がっていて、いまや国全体が協議の行方を固唾をのんで見守っています。 国民からの批判も出かねない状況で、習主席にとってさらなる譲歩は簡単ではありません。 このため今回の会談で、すべての問題で妥結し合意に至る可能性は、ほぼないと思います。 」 有馬 「となると、中国、習主席はどう出てくるのでしょうか?」 関総局長 「現時点では『持久戦』です。 中国としては協議の継続で合意し、さらなる追加関税を回避。 そして、持久戦に持ち込みたい考えだと思います。 これには、アメリカ大統領選挙が迫ってくればトランプ大統領に焦りが出て、議論を優位に進めることが出来るのではないか、いう読みがある。 これに対し習主席は共産党一党支配の国、中国の指導者。 選挙や支持率を気にする必要はありません。 この利を活かしてじっくり対峙(たいじ)し、議論を有利に進められる環境が整うのを待つということだと思います。 」 関総局長 「そのとおりだと思います。 今回の訪朝は貿易問題でトランプ大統領に押し込まれても、北朝鮮への影響力を誇示することによって、対抗するためのカードにする狙いだったと思います。 ただ中国は、非核化の問題は、まず米朝が話し合うべきという立場です。 現時点では本格的な仲介に乗り出す気はないと思います。 」 有馬 「となりますと、カギを握るのはやはりアメリカ、トランプ大統領ということになりますよね。 」 油井支局長 「アメリカとしては、まずは非核化に向けた北朝鮮の具体的な行動が先だという、基本的な立場は変わっていません。 ですが、こう着状態が続くなか、政権内部では打開策の一つとして、時間を区切って一時的に制裁の一部を緩和し、その間に北朝鮮の行動を見極めるという案も出ているのです。 ただ、こうした案は政権内では少数派とみられ、依然、強硬な意見も根強いのです。 しかしこの政権、トランプ大統領の判断がすべてです。 大統領は3回目の米朝首脳会談も視野に、最近も親書を交わしたばかりです。 今後、再び動きが活発化する可能性があり、目が離せない状況が続きそうです。

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「米中対立」のはざまで沈む日本の国難――アメリカが中国を倒せない5つの理由

中国 アメリカ 対立

中国が香港への統制を強化した「国家安全法」に反発し、アメリカが香港に認めている優遇措置の廃止手続きを発表。 アメリカVS. 中国の対立がエスカレートするなか、関心が集まっているのが日本の安倍首相の言葉だ。 公式声明のあとで、非公式の「追加説明」が外交ルートで行われているという。 中国の全国人民代表大会(国会)が5月28日、国家安全法を香港に導入する「決定」を採択した。 日本政府は直ちに、菅義偉官房長官がそれまで記者会見で使っていた「強い懸念」という表現を「深い憂慮」に切り替えた。 複数の関係者の話によれば、この表現は、様々な国際環境を頭に入れたうえで、周到に練られた結論だった。 まず、香港は「一国二制度」ではあるものの、中国の一部である事実を、日本も認めている。 そうである以上、抗議という形式は取りづらい。 政府関係者の1人は「中国が日本人を抑留した問題や、尖閣諸島の日本領海を侵犯している問題とは区別すべきだ。 香港問題でやり過ぎると、中国が日本の国内問題に首を突っ込んでくる名分を与えかねない」と語る。 そして、最大の友好国である米国への配慮も加えた。 新型コロナウイルス感染問題への対応に批判が広がり、経済不況も深刻になりつつあるトランプ米政権は、11月の大統領選を控え、中国叩きに狂奔している。 トランプ大統領は5月29日、中国と香港の当局者への制裁や、貿易などで香港に与えた優遇措置の停止などの方針を明らかにした。 米政府は当然、日本にも同調を求めていた。 お隣の韓国が「事態を注視する」といった表現にとどめたのに対し、日本は秋葉剛男外務事務次官が28日、中国の孔鉉佑駐日大使を外務省に呼んで「深い憂慮」を申し入れた。 形式として強い態度を示すことでバランスを取ったわけだ。 日本政府の対応について、自民党の一部などから、更に強い対応を求める声が出ている。 だが、表現を「憂慮」と、やや弱い水準にとどめたのは上述したような綿密な計算に基づいた結果だった。 今後の香港情勢を見極めて、徐々に表現を強くしていく余地を残し、外交戦術の選択肢を確保する狙いもあった。 いきなり、中国に対する制裁を口にしたトランプ政権のやり方に全面的に付き合う必要はないという計算も働いた。 そして、肝心の安倍晋三首相の中国に対する視線も厳しくなっているという。 香港問題について外務省や国家安全保障局などからの説明を聞くとき、首相からはしばしば中国を批判する言葉が口をついて出るという。 周辺は、内閣支持率の低下や、中国への厳しい対応を求める自らの支持層からの突き上げが原因ではないかと噂し合っている。 もともと、安倍首相自身、日本人拉致問題で名を上げてきただけに、人権問題には強い関心を持っている。 昨年12月の日中首脳会談でも、安倍首相は「香港の繁栄は中国の利益でもあり、日本や世界の利益につながる。 香港問題の解決に努力してほしい」と訴えた。 この言葉に、習近平主席は辟易とした態度を見せている。 安倍首相は5月25日の記者会見で、新型コロナウイルスの感染拡大について「中国から世界に広がったのは事実だ」と述べた。 この発言も、延期になっている習近平中国国家主席の訪日問題とは切り離し、中国に必要以上の政治的な配慮をしない姿勢を示したものだったのかもしれない。 中国外務省の趙立堅副報道局長も26日の記者会見で、安倍首相の発言について「ウイルスの発生源を政治問題にして、汚名を着せることに断固反対する」と反発していた。 ところが、ここで奇妙な現象が起きた。 安倍首相の会見を受け、共産党機関紙・人民日報系の新聞「環球時報」が社説で「安倍首相は同盟国であるアメリカに配慮しつつ、中国を刺激することを避けた」と説明した。 関係国からは、「趙局長の反応が正しいのか、環球時報の社説が本当なのか」「中国は、安倍首相に腹を立てているのか、立てていないのか」などと、中国の真意を訝る声が相次いだ。 こうしたなか、中国は、日中関係の行方を注視している関係国に対し、安倍首相周辺から、首相の記者会見についての追加説明があったと非公式に説明しているという。 追加説明の詳細は明らかになっていないが、おおまかに「安倍首相は、中国から広がった、とは言ったが、中国が発生源だ、とは明言していない」「首相の発言はなお、中国に配慮したものだから、中国も無用に腹を立てる必要はない」という趣旨の説明だったようだ。 ただ、日本政府は3月以降、閣議了解などで「中華人民共和国で発生した新型コロナウイルス感染症について、感染が世界的に拡大している」という表現を繰り返し、使っている。 上述した首相周辺の説明が事実だとしても、極めて政治的な言い回しだったと言える。 もともと、日中関係の改善や習近平中国国家主席の訪日推進は、安倍政権のレガシー(業績)づくりを重視した首相官邸の側近らが、慎重な態度を示した外務省を押し切って進めた政策だった。 中国が最近、安倍首相の発言に対して見せた異なる対応は、日本政府内の足並みの乱れをそのまま映し出した結果だったとも言えそうだ。 安倍首相の中国に対する怒りが本当であれば、いずれ、側近たちも首相に足並みをそろえるだろう。 トランプ大統領の乱暴な動きが心配だが、日本は今後、日米関係を基軸に中国と是々非々で付き合うという、本来の対中戦略に立ち戻っていくように見える。 実際、習近平氏の訪日を巡る調整は完全にストップしている。 日本政府内で「習氏の年内訪日」を予測する声は皆無だ。 そうなれば、今回の環球時報のような、「日本は中国に配慮した」というような反応も減っていくだろう。 安倍政権は今後、首相側近らを中心に一時期打ち出した「日中関係改善戦略」に、一体どんな外交哲学があったのか、という総括を迫られるかもしれない。

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米中貿易戦争、解決の糸口はあるのか? 対立の原因と現在の状況

中国 アメリカ 対立

米中対決は、アメリカが中国に最後通告を唐突に提示した、2018年5月がターニング・ポイントになりました。 メディアも中国政府も不意を突かれましたが、アメリカは着々と事前準備を進めていたのです。 この評論を書いてから5か月ほどあとに、とを書きました。 短期間で両国関係が劇的に変化したように見えますが、アメリカの動きに意外性はありません。 ナバロやライトハイザーなどのトランプ政権内対中強硬派が敷いた路線を、アメリカは突っ走っています。 情報源:CNBC、ロイター、CNN、The New York Times、ABC、NBC、AP、BBC、Foxなど(以上、オンライン版)。 日経新聞、Newsweek、Voice、中央公論など。 かつて日本弱体化に成功したアメリカ 現在の米中対決の背景に、日米貿易摩擦があるので、まずそれを総括したい。 戦後、敗戦国の日本が、日本人が意図したかしないかに関わらず、戦勝国のアメリカの覇権に挑戦した。 アメリカの貿易赤字が急拡大しただけではない。 三菱地所が、ニューヨークの象徴であるロックフェラー・センターなどの、主要な不動産を買いあさった。 東京を売れば、アメリカが2つ買えると言われた時代だ。 ハーバード大学教授のヴォーゲルが、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」を書くなどして、21世紀は日本の世紀になる、とはやし立てた。 日本たたきで活躍し米中対決の先頭に立つライトハイザー(AP通信) 覇権を脅かされたアメリカが、なりふり構わない露骨な反撃を開始。 日本は、自動車、繊維、鉄鋼、テレビなどで強力な自己規制を呑まされた。 さらに、農産物、自動車、金融、サービス分野での日本の閉鎖性が、激しく攻撃された。 日本車が街頭でたたき壊されるなどのジャパン・バッシングが、しばしばメディアをにぎわせた。 アメリカの反撃に際限はなく、世界を牛耳っていた半導体を含む日本のハイテク産業が、標的になった。 スーパー301条を使って、コンピュータ、宇宙技術、戦闘機開発、知的財産権(特許)などで、日本を徹底的に弱体化させる作戦が取られた。 日本の最先端エレクトロニクス産業が、壊滅的な打撃を受けた。 それがIT分野における日本の立ちおくれの原因になり、その影響が現在まで尾を引いている。 日本製品をアメリカに買ってもらえなければ、日本経済が大打撃を受けた。 最初の譲歩が次の譲歩を誘い、日本は、ハイテク技術、製造業、経済、金融業などの分野で、アメリカの後塵を排するところまで弱体化した。 アメリカの通商代表部(USTR)は大統領府内の機関で、代表は大統領に直属し、通商政策全般に関わる強大な権限を与えられている。 トランプによって代表に指名されたライトハイザーは、日米貿易摩擦時に通商代表部に所属し、対日交渉で戦果をあげた交渉の玄人だ。 現在は、最前線で中国と対峙している。 自分の成功体験から、日本に対して行った輸入規制を、中国にも適用することを主張している。 また、カリフォルニア大学教授だった、筋金入りの対中強硬派ナバロが、国家通商会議のトップに任命された。 ナバロは、自著をもとに、ドキュメンタリー映画「Death by China(中国がもたらす死)」を製作した。 アメリカの国民と経済が、中国から受けた被害を描いている。 覇権奪取の野望を隠さない中国 中国の露骨極まりない野望 沖縄を含む日本の南半分と、グアムが第2列島線内に入る。 相手国の弱みにつけ込む中国のやり方は、日米貿易摩擦でのアメリカと同じだ。 中国は、14億人の市場というアメを、他国企業の鼻先にぶらさげている。 国際的なルールを無視し、中国へ進出することの見返りに、最先端技術や知的財産を提供させている。 また、中国にぶつかる政策を打ち出した国の企業には、税関での審査遅延や、工場・店などへの厳しい立ち入り検査を行うなどして、陰に陽に圧力をかける。 ネット紅衛兵による他国企業への攻撃もすさまじい。 政治と経済が一体化しているので、政治判断が即座に経済に反映される。 帝国主義国家が持っていたのと同じ領土的野心を、中国は隠さない。 国際法を無視した、強引な南シナ海諸島の軍事基地化。 軍事基地化を狙っていると思われる、スリランカからギリシャに至る国々の港湾の獲得。 南太平洋の島国バヌアツで、恒久的な中国の軍事施設構築の協議が、密かに行われている、と米豪当局が推測している。 アメリカの足元のカリブ海諸国へも手を伸ばしている。 カリブの島国のほとんどが、インフラ整備のための巨額な拠出金を、中国から得ている。 太平洋と大西洋を結ぶパナマ運河の隣に、世界最長のニカラグア運河の建設が計画されているが、この建設に携わるのは中国系資本だ。 また、 一帯一路計画で、ユーラシア大陸各国を影響下に置くもくろみが、進行中。 中国の地政学的な戦略は単純だ。 経済的に困窮している小国を中心に、金で言うことをきかせる。 少額の投資で局地的な覇権を握ることができ、短期的には投資効率が良さそうだ。 だが、1つひとつの投資が少額でも、合計は巨額になる。 権益を獲得した土地の維持経費が、長期的な負担になる。 投資先は主に開発途上国なので、投資に見合ったリターンが保証されないばかりか、腐敗した政権が、資金を浪費する可能性が大きい。 アメリカに対抗できる軍事力を持つことも、視野に入っている。 アメリカを超える速さで国富を軍備に注がなければ、アメリカに追いつくことはできず、それをやれば中国は間違いなく疲弊する。 かつて、ソ連は、アメリカとの軍拡消耗戦で負けた。 けれども、歴史的な艱難辛苦を乗り越えて、陶酔に浸っている現在の中国には、そのリスクが見えなくなっている。 中国の挑戦に危機感を持ったアメリカが、今の時期に大々的な貿易戦争を仕掛けてきたことは、中国にとっては予想外だったはずだ。 米中関係では、中国の人口はアメにならない。 巨額な対米黒字が物語るように、中国は、アメリカ市場を必要としている。 そればかりではない。 先端産業で追いつくためには、アメリカのハイテク技術を手に入れなければならない。 トランプ政権の攻撃に、硬軟取り混ぜての言葉で反論するが、 米中貿易戦争では中国のほうが大きな打撃を受けるので、腰が引けている。 今ならばまだ貿易戦争で勝利できるアメリカは、無理難題を中国に押しつけ、それが受け入れられれば、間違いなく要求をエスカレートさせる。 中国の弱体化が明確になるまで、この要求のエスカレートが止まることはない。 覇権を望む中国の都合 世界覇権に挑戦する中国を叩きつぶすのが、覇権国アメリカの本能だが、覇権奪取を明確にした中国には、中国の都合がある。 習近平が独裁権力を握った背景に、間違いなく中国共産党の危機感がある。 共産党は、高級幹部が組織とコネを使って経済を支配する、強大な利権集団になっている。 公の統計はないが、時々西側のメディアで報道される高級幹部の個人資産は、何千億円から何兆円に達する。 習の腐敗撲滅運動から明らかなように、特権層といえども、習に敵対する勢力は、富をはく奪され禁固刑に処せられる。 習を中心にした党幹部に近い人々は、法的にも行政的にも保護され、経済発展とともにより富裕になっていく。 共産主義国とは名ばかりで、貧富の格差は、日本などの資本主義国をはるかに上回る。 労働者の年間平均賃金は約76万円だが、上位1%の富裕世帯の平均賃金は、約1900万円に達する(日経新聞14年2月23日)。 ジニ係数の伸びを見ると、格差は最近になってさらに広がっている。 公の統計はないが、全土で暴力的なデモや工場のストライキが多発している、と言われる。 中央の権力が手をゆるめれば、国家分裂の遠心力が働くことは、中国の歴史が示している。 それが、絶対的な強権(独裁者)が必要な理由だ。 その典型をイスラム主体のウイグル族に見ることができる(ロイター18年5月22日)。 監視対象の個人が自宅や職場から300m以上離れると、顔認識ソフトが自動的に当局に通報。 個人の追跡を可能にするスマホ用アプリをダウンロードしないと、逮捕される可能性がある。 出国者の家族を拘束し、政治的な圧力をかけることがある。 私は、ウイグル族の留学生と話をしたことがあるが、言葉の端々で抑圧されている状況を感じることができた。 国民を抑圧するだけでは足りず、 排他的なナショナリズムをあおり、対外的な軍拡で国家意識を高揚させ、不満を外側へ向けることを試みている。 覇権維持の本能に駆られたアメリカと、1歩間違えば国が分裂し、共産党の特権層が追い落とされる中国との戦いにおいては、両国とも引くことができない。 米中貿易戦争のプロローグ 1990年代まで日米貿易摩擦が尾を引き、中国が問題になることは余りなかった。 2000年代に入って中国からアメリカへの輸出が増し、06年にアメリカの対中貿易赤字が2300億ドル(モノの貿易)に達した(17年に3750億ドル)。 アメリカの貿易赤字の28%を中国が占めるようになり、米中の貿易摩擦が表舞台に現れた。 トランプは、中国の不公平な貿易慣例によって、アメリカで6万の工場が閉鎖に追い込まれ、600万人の雇用が失われた、と指摘した。 18年3月22日に、トランプは、日本たたきに使った301条を中国に対して発動。 化学薬品、テレビ、自動車、電子部品などの、産業技術や輸送関連製品と医療用品が、主な標的だ。 「中国製造2025」計画で、先端技術の強国になるのを目指す中国の取り組みに、打撃を与えることが目的であるのは、明らかだ。 中国は、2025計画で、情報、ロボット、航空機、新エネルギー車、医薬品、発電設備、先端材料、農業機械、造船・船舶工学、高度鉄道設備などの幅広い分野において、輸入品を中国製品に入れ替えることを目指している。 中国は報復を辞さない姿勢を見せた。 中国商務部は、アメリカからの果物、豚肉、鋼管などの輸入品に対して、30億ドルの追加関税を課する、と発表した。 それまで、 中国の意に反することをやった国にこの手の脅しが効果的だったことが、中国政府の判断を誤らせたと思われる。 さらに、アメリカの覇権維持の本能と、共和党も民主党も、対中政策では一致団結していることも、見落としていた。 中国の報復措置実施によって、トランプ政権の姿勢がさらに強硬になった。 4月に、2機のB52爆撃機が、数機のF-15戦闘機とともに、スプラトリー諸島の中国施設の間を演習のために飛行した。 アメリカ商務省が、今後7年間、ZTEと取引することをアメリカの企業に禁じた(18年4月17日)。 ZTEは、イランや北朝鮮に違法に通信機器を輸出した。 ZTEはスマホの世界販売で9位、アメリカでは4位と強い。 スマホ生産世界第3位のファーウェイを、アメリカの検察が捜査していることも表面化(18年4月25日)。 アメリカ政府は、両社の通信端末が、中国当局のスパイ活動に利用されている、と判断している。 中国のシリコンバレーともてはやされる深センに、衝撃が走った。 ZTEとファーウェイは、ここに本社を置いている。 制裁の影響がすぐに表れ、半導体などの主要部品をアメリカ企業に頼るZTEは、スマホを生産できなくなった。 スマホ事業の売却を検討している(18年5月10日)。 幹細胞培養技術で中国トップのハイテク企業が、存立の危機に直面。 アメリカの厳しい関税対象に、細胞培養用のロボットが含まれているからだ。 他の医療機器・衣料品・鉄鋼などの製造業にも、急激な受注減が始まっている。 「影の銀行」などによる中国の負債は膨大だ。 政府は、持続可能な成長を目指して負債圧縮を進めていたが、貿易戦争の幕開けによって、成長確保を優先するための軌道修正を始めた。 18年4月17日に、突如として銀行預金準備率が引き下げられ、19日に産業用電気料金の10%引き下げが発表された。 さらに、製造・運輸業での付加価値税の税率引き下げと、所得・法人税の減税を行う方針が示された。 アメリカによる宣戦布告 壮絶な戦いが裏で進行中であることは、表に出てくる報道から推察できる。 両国の戦いは、一見混乱の極にあるように見えるが、注意深く読み取れば、一連の流れには矛盾のないことが分かる。 この会議に先立ってアメリカが中国に提示した「枠組みの草案」は、驚くべきものだ。 文字通りの最後通告(宣戦布告)で、その内容は、宗主国が隷属している植民地へ下す命令と同じだ。 近代において欧日列強によって植民地化された中国に、再び植民地になることを求めるような、侮蔑的な内容だ。 日経新聞5月10日号で、ファイナンシャル・タイムズのコメンテーターであるウルフが、1ページに渡ってその内容を紹介している。 ここにその要点を書く。 アメリカが提示した「枠組みの草案」• 18年6月から1年の間に、対米貿易黒字を1000億ドル(約11兆円)削減すること。 次の1年で、さらに1000億ドルを削減。 市場をゆがめる 政府補助金を即刻廃止すること。 外国資本との合弁事業において、技術移転を求める慣行を撤廃すること。 サイバー攻撃、スパイ活動、偽造、海賊行為による、アメリカの知的財産と技術の奪取を停止すること。 アメリカの輸出管理規制を順守すること。 中国製品に高関税を課したアメリカの処置について、WTOに提訴したが、これを撤回すること。 アメリカが導入する全ての処置に対して、報復処置を取らない。 アメリカは、ITなどの安全保障上重要な産業への、中国からの投資を制限しているが、反対や異議申し立てをしないこと。 中国が、 外国からの投資に課している、資本や持ち株への制限を撤廃すること。 20年7月までに、 国益に重大な影響を与えない部門への関税を、アメリカと同等かそれ以下にすること。 成果について四半期ごとに検証し、中国が内容を守っていない場合は、関税や輸入制限を課す。 アメリカの処置に対して、異議などのいかなる対抗処置も取らないこと。 制裁金支払い、違法行為停止、規制撤廃、政府補助金停止、関税引き下げ、報復禁止、米国法順守、報告義務などで、ただちに行動することを求めている。 要求は広範かつ具体的で、抽象的な言い逃れを認めない決意が、前面に出ている。 こんな無法な命令を他国から唐突に下されて、意表を突かれ、習政権が固まったことは容易に想像できる。 アメリカの攻撃は非情そのものだ。 駐中アメリカ大使の言(18年5月14日)、「 中国は多くのことをやると言ったが、何もやっていない。 我々の要望を知りたいと言ったので、リストを渡した。 我々が望んでいることを知らないとは、もう言わせない。 中国は、市場開放のタイム・テーブルを示さなければならない。 大統領は、農産物輸入の劇的な増加を望んでいる」。 アメリカの決意を見誤った中国 トランプが対中貿易戦争を開始したように見えるが、彼は、「Trump First」の日和見主義者に過ぎない。 対中政策は、筋金入りのアメリカ国家主義者の手に渡っている。 ZTEを救いたい習が、トランプに電話で何度か直談判した結果、日和見主義者のトランプが、突然に、商務長官ロスにZTEを救うように命じた。 トランプによると、「中国で多くの仕事が失われることを望まない(China First? 対中交渉を担当する政府高官は、ZTEへの制裁をゆるめるかわりに、アメリカの農産物への関税を下げ、アメリカの企業が、中国のIT企業を買収できるようにする、という要求を出すことにした。 トランプの命を受けた1日後に、 ロスが出した声明は、「ZTEは貿易協議とは関係がない。 協議から切り離して考える」。 その数時間後にトランプがツイッターに書いた。 「ZTEはアメリカから多くの部品を買う。 また、習と私には個人的な関係がある。 習に頼まれたのでZTEを救いたい」。 トランプのツイートに、与野党の議員から激しい非難が巻き起こった。 「人民解放軍と関係が深いZTEは、国家安全保障に直結する問題だ」(18年5月14日)。 国家経済会議委員長クドローが主張した(18年5月21日)。 「ZTEは数回に渡って法を破った。 無傷で逃げることはできない。 ZTEへの療法は、十分な罰金、非常に厳しいコンプライアンス対策、経営陣の刷新などになる」。 中国は、天然資源や農産物の輸入拡大策を示し、黒字圧縮と引き換えにZTEへの制裁緩和を求めた。 アメリカが望む「中国製造2025」計画の見直しを、再び拒否した。 この協議後の共同声明によると、中国が、モノとサービスの輸入を大幅に増やすことで、合意した。 ガス、原油、大豆、航空機、半導体、金融、医療サービスなどが、含まれる。 だが、数値目標にもアメリカの対中制裁の撤回にも、共同声明は触れなかった。 前商務長官ラビンが言った(18年5月21日)。 「収入が少し増える程度の取引には、応じるな。 2000億ドルの数値目標に固執すると、目標を見誤る。 旅客機の需要も2倍になることはない。 そもそも、港湾などのインフラがボトル・ネックになって、アメリカの供給力が2倍に拡大することは、あり得ない。 知的財産権の強制移転や、サイバー攻撃を止めさせるなどの構造問題への解決を、要求しなければならない」。 貿易赤字は、輸入品の価値が輸出品を上回るときに発生する。 史上最長のうちの1つになっている、アメリカの現在の好景気を考慮すると、モノの貿易赤字が、経済にダメージを与えているとは考えにくい。 政権が意図的に無視しているのは、旅行から金融に至るサービス分野で、アメリカの優位が拡大し、モノ以外の収入が増えていることだ。 アメリカが中国からの輸入を削減しない限り、対中貿易赤字の削減は不可能だ。 すなわち、この問題は中国の問題ではなく、アメリカの問題なのだ。 アメリカの権力構造のトップにいる人たちは、間違いなくこのことを明確に分かっている。 自己中心的で移り気なトランプが、分かっているかどうかはともかく.....。 オーストラリアのターンブル政権が、外国人による政治献金を禁じて、外国人の政治介入を制限する法案を提出した。 中国を名指ししていないが、対中国政策であることは、誰でも知っている。 中国政府は不快感を示した。 中国共産党機関紙が、鉄鉱石、ワイン、牛肉などの輸入削減や、ターンブル首相の訪中を延期させることを、提案した(18年5月23日)。 南沙諸島に、対艦巡航ミサイル、地対空ミサイル、電波妨害装置などが配備された。 アメリカ国防総省は、中国による南シナ海の軍事拠点化を理由に、アメリカ海軍が20カ国の海軍と開く、合同軍事演習(リムパック)への招待を撤回した。 中国はこの決定を批判(18年5月24日)。 中国は、17年11月に、国賓以上の待遇でトランプをもてなした。 トランプが大喜びしたことが、アメリカの決意を、中国が見誤った理由の1つになると思われる。 4月のアジア・フォーラムでは、中国が自由貿易のリーダーである、と習が述べた。 けれども、今までのところ、中国のいろいろな戦術は成功していない。 けれども、 ZTEへの制裁だけでも、メンツを重んじる習が、あわててトランプに何度も電話をかけたことを、思い出したい。 リーマン・ブラザーズという1企業の破綻が、回りまわって世界経済に大打撃を与えた。 貿易戦争による中国国内への打撃が、目に見える直接的なものだけに限定されると考えるのは、余りにも近視眼的だ。 国の経済の一部でも打撃を受ければ、その影響が広がる範囲を事前に予測することは、極めて難しい。 特に、政治と経済が固く結びついている中国では、経済への打撃が政治への打撃に直結する。 中国政府の反応は、その見えないリスクに気づいていることを、示している。 アメリカ政府は、今までに打ち出した制裁は最初の1歩にすぎず、より厳しい制裁をさらに打ち出す、と述べている。 米中貿易戦争の開始が20年後だったならば、中国はより力をつけているので、勝者がどちらになるかは分からない。 しかし、ドルが世界の基軸通貨で、軍事、金融、技術、貿易などで、米中の差がまだ大きい現在、貿易戦争の勝者がアメリカになることは、間違いない。 アメリカ政府の中枢にその確信犯がいる。 けれども、覇権を握り続けることによるアメリカの利益が、長期的にそれを上回ることはほぼ確実だ。 アメリカの対中攻撃は、中国が予想していなかったスケールとスピードで、展開されている。 地方政府や「影の銀行」などの債務の急増で、深刻な問題を抱えている中国。 アメリカによる制裁がさらに広範になれば、中国経済が崩壊する危機にひんする可能性がある。 これは、共産党政権の崩壊につながりかねない。 最も大きな不確定性要素は、弱体化した中国の内部矛盾が表に噴出し、中国が極度の混乱に陥る可能性だ。 このような状況下で、日本はどのようにふるまえばいいのだろうか?米中を直接にリードすることはできないが、米中の間でキャスティング・ボートを握ることはできる。 米中対決が、日本にとって世界にとって、より良い着地点に到達するように考えることができるのは、直接の当事国ではない日本だ。

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